ビスタビジョン

ビスタビジョンの概要

ビスタビジョン（VistaVision）は、映画撮影における特別なフィルム形式で、主に画面アスペクト比が約1.66:1の横長の画面を持つ。1950年代にアメリカのパラマウント・ピクチャーズ社によって開発され、競合する20世紀フォックス社のシネマスコープと対抗する形で登場した。このフィルム形式は、より広い映像表現を可能にし、映画の画質の向上に大いに寄与した。

ビスタビジョンの原理

ビスタビジョンは、1954年の映画『ホワイト・クリスマス』において初めて活用された。この技術では、35ミリフィルムのスタンダードサイズに対し、横に駆動させて撮影する方式を採用している。スタンダードサイズの1コマは4パーフォレーションで、サイズは20.3mm×15.2mm、アスペクト比は1.37:1である。対して、ビスタビジョン・カメラにおいては、8パーフォレーションを利用し、36mm×18.3mmのサイズ、アスペクト比1.66:1の画面を得ることができる。この方式によって、通常のスタンダードサイズの2倍以上のフィルム面積を使用でき、結果として画質が格段に向上した。

映画館では通常、縦駆動の映写機を使用するため、上映用プリントには縦駆動ポジフィルムに縮小焼きつけを行う。この過程で、スタンダードサイズに比べ上下の比率が小さくなるため、マスクを施して横長の画面を実現させる。パラマウントは、この時点でアスペクト比1.85:1を採用した。

ビスタビジョンの課題

画質の向上がもたらされる一方で、ビスタビジョンにはいくつかの課題も存在した。撮影用フィルムが通常のスタンダードサイズの2倍になるため、コストがかさむのはもちろん、撮影可能な時間も短くなる。また、カメラ自体のサイズが大きくなり、使用が難しいという問題もあった。そのため、1960年代に入るとフィルムの質が改善され、より一般的な撮影スタイルが普及し始め、ビスタビジョンの利用は減っていった。1961年の映画『片目のジャック』以降は、この技術がほとんど使用されなくなる。

ビスタビジョンの再評価

しかし、1977年公開の『スター・ウォーズ』における特撮でビスタビジョンが再び注目を浴びることとなった。特撮映像は多重合成されるため、画質の劣化を防ぐためには大判フィルムが必要であり、高額な65mmフィルムの代替としてパラマウントから購入した中古のビスタビジョン・カメラが活用された。この結果、ビスタビジョンの優秀性が明らかになり、特撮シーンでの使用が進行した。

現在の使用状況

ビスタビジョンは当初の撮影方式から変更され、特殊なカメラを必要とするため、その後は本来の方式での撮影は少なくなった。しかし、フィルムの性能向上や映画館での横長画面への需要が高まったことから、ビスタサイズは今なお広く利用されている。この方法では、縦駆動の通常カメラでスタンダードサイズのフィルムを撮影し、上映時にマスクを使って横長の映像を得るスタイルが主流である。

上下にマスクがかけられる前のフィルムを利用することで、テレビサイズに流用する際の処理が容易になる。ただし、撮影時には上下が隠れることを前提に撮影されるため、不都合が生じることもある。また、アスペクト比の違いから、ヨーロピアン・ビスタ（1.66:1）とアメリカン・ビスタ（1.85:1）という2種類のビスタが登場した。特に日本映画では、大映が初めて導入したアメリカン・ビスタサイズが多く使われている。

最後に、現在の日本の映画館では主にアメリカン・ビスタやスコープサイズのスクリーンが利用されており、他の形式の映画はこれに合わせて上映されるため、しばしば「上下が切れた」状態や左右にマスクをかけて上映されることがある。DVDやブルーレイにおいては、1.78:1や1.33:1と固定された画面サイズが多く、アメリカン・ビスタでは僅かに上下に黒帯が、ヨーロピアン・ビスタでは上下・左右に帯が現れることが一般的である。

関連項目

• - テクニラマ
• - スーパー・テクニラマ70
• - 映画用語
• - 画面サイズ
• - ビスタ

もう一度検索