ビッグ・オーディオ・ダイナマイト

ビッグ・オーディオ・ダイナマイト（Big Audio Dynamite）の軌跡

ビッグ・オーディオ・ダイナマイト（Big Audio Dynamite, BAD）は、ザ・クラッシュのギタリスト、ミック・ジョーンズが中心となり結成されたイギリスのロックバンドです。彼らは、パンク・ロックを基盤に、ダンス・ミュージック、ヒップホップ、レゲエ、ファンクなど、様々な音楽スタイルを大胆に取り入れた、革新的なポストパンクサウンドを展開しました。一度解散しましたが、2011年にはオリジナルメンバーでの再結成を果たし、ファンを熱狂させました。

バンドの変遷

BADは、その活動期間中にいくつかの形態変化を経験しています。

ビッグ・オーディオ・ダイナマイト（1984年 - 1990年）

初期のラインナップは以下の通りです。

ミック・ジョーンズ - ギター、ボーカル
ドン・レッツ - サウンドエフェクト、ボーカル
ダン・ドノヴァン - キーボード
レオ・ウィリアムズ - ベース
グレッグ・ロバーツ - ドラムス、バックボーカル

ミック・ジョーンズと映画監督ドン・レッツ（ザ・パンク・ロック・ムービー』の監督であり、クラッシュのミュージックビデオやドキュメンタリーを手掛けた）を中心に結成され、1985年にアルバム『ディス・イズ・ビッグ・オーディオ・ダイナマイト』でデビュー。このアルバムは、彼らの多様な音楽性を打ち出し、一躍注目を集めました。

1986年のアルバム『No. 10, アッピング・ストリート』では、盟友ジョー・ストラマーを共同プロデューサーに迎え、数曲を共作。1987年にはU2のワールドツアーをサポートし、その知名度をさらに高めました。その後も、『タイトゥン・アップ Vol. '88』（1988年）、『メガトップ・フェニックス』（1989年）と精力的にアルバムをリリース。『タイトゥン・アップ Vol. '88』に収録された「ジャスト・プレイ・ミュージック!」は、ビルボードのモダン・ロック・トラックスで1位を獲得する大ヒットとなりました。

1990年には、映画『フラッシュバック』のためにオリジナルメンバーで「フリー」を制作・録音しましたが、これがオリジナル・ラインナップでの最後の曲となり、バンドは一旦解散しました。

ビッグ・オーディオ・ダイナマイトII（1991年-1993年）

1990年後半、ミック・ジョーンズはビッグ・オーディオ・ダイナマイトII（BAD II）として活動を再開。イギリス限定でアルバム『クール・エイド』をリリースしました。ダン・ドノヴァンは、BADの最後の曲「フリー」のリメイクである「キッキン・イン」にのみ参加しました。

新たなラインナップは以下の通りです。

ミック・ジョーンズ - ギター、ボーカル
ニック・ホーキンス - ギター、バックボーカル
ゲイリー・ストナッジ - ベース、バックボーカル
クリス・カヴァナー - ドラムス、バックボーカル

BADから唯一残ったミック・ジョーンズを中心に、ギタリスト2人体制となった新ラインナップは、よりクラッシュに近いサウンドを追求し、オルタナティヴ・ロックの要素を強めました。1991年にリリースされたアルバム『ザ・グローブ』には、バンド最大の商業的成功を収めたシングル「ラッシュ」が収録されています。この曲は、アメリカのモダン・ロック・チャートで1位を獲得し、「イノセント・チャイルド」と「ザ・グローブ」もシングルとしてリリースされました。

BAD IIはU2のZooTVツアーをサポートし、ライブEP『オン・ザ・ロード・ライヴ '92』をリリースしました。

ビッグ・オーディオ（1994年）

その後、バンドはキーボードのアンドレ・シャップス（『ザ・グローブ』のコ・プロデューサー）と、DJ・ボーカルのマイケル・“ゾンカ”・カスタンスを迎え入れ、1994年にアルバム『ハイアー・パワー』をビッグ・オーディオ名義でリリースしました。しかし、このアルバムは『ザ・グローブ』やそれ以前の作品ほどの評価を得ることはできませんでした。

ミック・ジョーンズ - ギター、ボーカル
ニック・ホーキンス - ギター、バックボーカル
ゲイリー・ストナッジ - ベース、バックボーカル
クリス・カヴァナー - ドラムス、バックボーカル
アンドレ・シャップス - キーボード
マイケル・カスタンス - DJ、パーカッション、バックボーカル

1995年には、ゲイリー・カーファーストのラジオアクティヴ・レコードと契約し、アルバム『F-Punk』をリリースしましたが、これは彼らにとって最も売れないアルバムとなりました。しかし、このアルバムは『ハイアー・パワー』と同じラインナップであるにもかかわらず、ビッグ・オーディオ・ダイナマイト名義でリリースされました。

活動停止まで（1995年 - 1998年）

ミック・ジョーンズ - ギター、ボーカル
アンドレ・シャップス - キーボード
ダリル・フルストゥ - ベース (1996 - 1998)
ボブ・ウォンド - ドラムス (1996 - 1998)
ランキング・ロジャー - ボーカル (1996 - 1998)

ラジオアクティヴ・レコードは、バンドの次のアルバム『エンタリング・ア・ニュー・ライド』の発売を中止しました。この時のラインナップには、ボーカリストのランキング・ロジャー（ザ・ビート、ジェネラル・パブリック）が参加していました。1998年、バンドは『エンタリング・ア・ニュー・ライド』の曲の配信を主目的とする新たなウェブサイトを立ち上げましたが、長くは続かず、そのまま活動を停止しました。

リユニオン、そして現在

2005年、ミック・ジョーンズは元ジェネレーションX、ジグ・ジグ・スパトニックのトニー・ジェイムスとのプロジェクト、カーボン/シリコン|カーボン_シリコンに取り組みました。

2007年初めには、BAD IIのライブDVDがリリースされました。

そして2011年、21年ぶりにオリジナルメンバーが集結し、ワールドツアーを開催。フジロックフェスティバルにも出演し、18年ぶりの来日公演を行いました。

ディスコグラフィー（一部）

ディス・イズ・ビッグ・オーディオ・ダイナマイト (1985)
No. 10, アッピング・ストリート (1986)
タイトゥン・アップ Vol. '88 (1988)
メガトップ・フェニックス (1989)
ザ・グローブ (1991)
ハイアー・パワー (1994)
F-Punk (1995)

その他の情報

「E=MC²」は、ジェームズ・フォックスとミック・ジャガー主演の映画『パフォーマンス』（1970年）からサンプリングされています。
「E=MC²」は、ハード・ファイによってライブでカバーされており、2006年5月18日には、ミック・ジョーンズがハード・ファイのステージのアンコールに参加し、「E=MC²」を共演しました。

ビッグ・オーディオ・ダイナマイトは、その革新的な音楽性と、常に変化を恐れない姿勢で、多くのミュージシャンに影響を与え続けています。

関連項目

ドレッドゾーン
* ジグ・ジグ・スパトニック - BAD IIのクリス・カヴァナーや、ミック・ジョーンズのカーボン/シリコン|カーボン_シリコンでのパートナー、トニー・ジェイムスが在籍していた。

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