ビデオ表示端末

ビデオ表示端末（VDT）とは

ビデオ表示端末（Video Display Terminal、VDT）は、コンピュータの画面表示装置の総称です。一般的には「ディスプレイ」と同義で用いられますが、労働衛生管理の分野では、長時間作業による健康への影響を考慮する際に、特に「VDT」という用語が用いられます。

初期のコンピュータではテレタイプ端末のような機械式端末が使われていましたが、1960年代から1970年代にかけて、ブラウン管を使ったビデオ方式の表示装置が普及しました。この表示装置を指す言葉としてVDTが用いられるようになり、長時間作業によって特有の症状が現れることが認識されるにつれて、労働衛生管理の観点から注目されるようになりました。

VDTの歴史

初期のVDTとしては、1964年に登場したIBM 2260が挙げられます。1970年代には、以下のVDTが使用されていました。

ADM-3A（Lear Siegler, Inc.製、1976年～）
VT50（DEC製、1974年～）
VT52（DEC製、1975年～）
VT100（DEC製、1978年～）

英語では、VDTを使って長時間働く人を「VDT worker」と呼びます。近年では、労働衛生管理とは関係のない文脈では、コンピュータの表示装置を「ディスプレイ」と呼ぶことが一般的です。

VDT症候群

VDT症候群とは、コンピュータのディスプレイを使った長時間作業によって引き起こされる、目、身体、精神の不調の総称です。VDT作業が長時間に及ぶと、様々な症状が現れることがあります。

主な症状

目の症状：目の疲れ、痛み、乾燥、かすみ、視力低下などがあります。これらの症状は眼精疲労とも呼ばれ、特に眼に現れる症状は「IT眼症」とも呼ばれます。
身体症状：肩こり、首や肩、腕の痛み、だるさなどがあり、慢性化すると背中の痛みや手指のしびれにつながることもあります。
精神症状：イライラ、不安感、抑うつ状態などが現れることがあります。

労働衛生管理におけるVDT

労働衛生管理の分野では、端末作業を指す際に「VDT」の略称が広く用いられており、VDTを使った作業は「VDT作業」と呼ばれます。VDTは世界的に、労働衛生管理や労働災害に関連する行政用語として使用されています。

日本では、1985年に労働省が「VDT作業のための労働衛生上の指針」を定め、コンピュータ画面を見つめる作業が労働衛生管理の対象となりました。その後、2002年には「VDT 作業における労働衛生管理のためのガイドライン」が策定され、具体的な指導内容が示されました。しかし、2019年7月には「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」が新たに定められ、「VDT」という用語は労働衛生管理行政の中では、以前ほど使われなくなりました。

労働衛生管理行政におけるVDTの変遷

1. 1985年：労働省通達「VDT作業のための労働衛生上の指針について」が発出。
2. 2002年：「VDT 作業における労働衛生管理のためのガイドライン」策定。
3. 2019年：「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」制定、VDTという用語は後退。

まとめ

VDTは、コンピュータのディスプレイを指す用語であり、特に労働衛生の分野で用いられます。VDTを使った長時間作業はVDT症候群を引き起こす可能性があり、適切な作業環境の整備と健康管理が重要です。労働衛生管理行政においては、VDTという用語の重要性は薄れつつありますが、VDT作業による健康リスクへの意識は引き続き重要です。

関連情報

VDT作業
VDT症候群

外部リンク

「ＶＤＴ作業における労働衛生管理のためのガイドライン」 - 厚生労働省の指針

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