テレタイプ端末

テレタイプ端末：遠い距離をつないだ機械式タイプライターからコンピュータ端末へ

テレタイプ端末（Teletypewriter、TTY）は、かつて通信とコンピュータの入出力装置として広く利用された機械式タイプライターです。遠く離れた場所と文字情報をやり取りできることからその名が付けられ、電信、コンピュータ端末、そして様々な通信システムに利用されました。本稿では、テレタイプ端末の歴史、技術的な仕組み、種類、そして現代におけるその影響までを詳しく解説します。

テレタイプ端末の起源と進化

テレタイプ端末の起源は、19世紀中頃の電信技術の発展に遡ります。ロイヤル・E・ハウスによる電信印刷機の開発を皮切りに、デイビッド・エドワード・ヒューズ、エミール・ボドー、そしてドナルド・マレーらの貢献によって、遠隔操作可能な電動タイプライターが徐々に洗練されていきました。

特に、ボドーによる5ビット符号体系（Baudot Code）の開発は重要な転換点でした。この符号体系は、文字を5ビットのデジタル信号で表現することで、効率的な通信を可能にしました。その後、マレーによるBaudot Codeの改良や、制御文字の導入により、通信の柔軟性と信頼性が向上しました。

初期のテレタイプ端末は、単に文字を送受信する装置でしたが、紙テープの活用により、オフラインでのメッセージ作成や保存が可能になり、通信効率の向上が図られました。この紙テープは、コンピュータとのデータ交換にも使用され、テレタイプ端末とコンピュータとの連携を促進しました。

テレタイプ端末の技術的な仕組み

テレタイプ端末は、機械式タイプライターをベースに、通信機能を統合した装置です。多くの端末は5ビットのBaudot Codeを採用し、「マーク」と「スペース」という2つの状態の電流を用いて通信を行っていました。文字コードは、スタートビット、データビット、ストップビットから構成され、調歩同期式通信を採用していました。

通信速度は「words per minute (WPM)」や「operations per minute (OPM)」で表現され、60WPM、75WPMなどが一般的でした。また、通信回線は、専用線や公衆交換網が利用され、複数の端末を接続することも可能でした。

テレタイプ端末の種類と主要メーカー

テレタイプ端末は、送受信機能の有無や、紙テープの利用可否などによって様々な種類がありました。代表的なものとしては、ASR（Automatic Send-Receive）、KSR（Keyboard Send-Receive）、RO（Receive Only）、SO（Send Only）などがあります。

主要メーカーとしては、テレタイプ社（Morkrum社とKleinschmidt社の合併から誕生）、Creed & Company、オリベッティ、ジーメンスなどが挙げられます。これらのメーカーは、それぞれ独自の機種を開発し、市場に供給していました。

コンピュータ端末としてのテレタイプ

テレタイプ端末は、コンピュータの普及初期において、重要な入出力装置として利用されました。特に1960年代以降、タイムシェアリングシステムの普及とともに、遠隔地からコンピュータにアクセスするための端末として広く使用されました。

シンプルなテキストベースのインターフェースは、後のコマンドラインインターフェースやキャラクタユーザインタフェースの基礎となりました。また、紙テープは、コンピュータとのデータのオフラインでのやり取りや、出力データの記録媒体として活用されました。

テレタイプ端末の衰退

しかし、1970年代以降、ラインプリンタやVDT（ブラウン管ディスプレイ）といったより高速で高機能な入出力装置が登場し、テレタイプ端末は徐々にその地位を失っていきました。パーソナルコンピュータの普及も、メインフレームへのアクセス方法に変化をもたらし、テレタイプ端末の需要を減少させました。

テレタイプ端末の現代的意義

テレタイプ端末は現在ではほとんど使われていませんが、その歴史的な意義は無視できません。初期のコンピュータネットワークや通信システムの基盤技術として、現代のデジタル社会の礎を築いたと言えるでしょう。また、TTYプロトコルは、一部のシステムで現在も利用されています。例えば、航空管制システムや聴覚障害者用文字電話（TDD）などで、その技術的遺産は現代にも受け継がれています。

まとめ

テレタイプ端末は、通信技術とコンピュータ技術の発展において重要な役割を果たした装置でした。その歴史、技術、そして現代における影響を理解することは、デジタル社会の進化を理解する上で非常に重要です。機械式タイプライターからコンピュータ端末へと進化を遂げたテレタイプ端末の物語は、技術革新のダイナミズムを私たちに教えてくれます。

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