ビハインド・ザ・サン

エリック・クラプトン / ビハインド・ザ・サン

『ビハインド・ザ・サン』（原題: Behind the Sun）は、ギタリストとして名高いエリック・クラプトンが1985年にリリースしたスタジオ・アルバムです。

この作品の制作において、クラプトンはドラマーでありシンガーとしても成功を収めていたフィル・コリンズを主要プロデューサーとして迎え入れました。このプロデューサー起用は、当時の音楽シーンの潮流も踏まえ、より大衆に受け入れられやすい、洗練されたポップなサウンドを目指す意図があったとされています。フィル・コリンズとの共同作業により、アルバム全体にはそれまでのクラプトンの作品とは一線を画す、モダンでポップな響きが付与されました。

しかし、アルバム完成間近になって、所属レコード会社は市場での成功を見据え、よりラジオでのオンエアに適した、いわゆるシングル向きの楽曲の追加制作を求めました。この要望に応えるため、「ラヴ・キャン・ドゥ」（See What Love Can Do）、「サムシング・ハプニング」（Something's Happening）、そして「フォーエヴァー・マン」（Forever Man）の3曲が、別途プロデュースされることになります。これらの楽曲のプロデュースは、ヴァン・ヘイレンなどのヒット作を手掛けたことで知られるテッド・テンプルマンと、レニー・ワロンカーという別のチームが担当しました。結果として、アルバムにはフィル・コリンズによるポップなサウンドと、テッド・テンプルマン/レニー・ワロンカーによるより商業的なアプローチの楽曲が混在する形となりました。

この中で、「フォーエヴァー・マン」がアルバムからの第一弾シングルとして発表され、アメリカのBillboard Hot 100チャートで最高26位を記録するなど、まずまずのヒットとなりました。

また、『ビハインド・ザ・サン』は、その後のエリック・クラプトンの音楽活動において重要な役割を果たすことになる二人のミュージシャン、ベーシストのネイザン・イーストとキーボーディストのグレッグ・フィリンゲインズが、彼のレコーディングに初めて参加した記念すべき作品でもあります。彼らはこのアルバムへの参加を皮切りに、長年にわたりクラプトンのツアーやレコーディングをサポートし、彼のバンドに不可欠な存在となっていきます。

収録曲

特記なき楽曲はエリック・クラプトンが手掛けています。

1. シーズ・ウェイティング - She's Waiting (Clapton, Robinson)
2. ラヴ・キャン・ドゥ - See What Love Can Do (Jerry Lynn Williams)
3. セイム・オールド・ブルース - Same Old Blues
4. ノック・オン・ウッド - Knock On Wood (Floyd, Cropper)
5. サムシング・ハプニング - Something's Happening (J. L. Williams)
6. フォーエヴァー・マン - Forever Man (J. L. Williams)
7. イット・オール・ディペンズ - It All Depends
8. タングルド・イン・ラヴ - Tangled In Love (Levy, Feldman)
9. ネヴァー・メイク・ユー・クライ - Never Make You Cry
10. ジャスト・ライク・ア・プリズナー - Just Like A Prisoner
11. ビハインド・ザ・サン - Behind The Sun

主なレコーディング・メンバー

エリック・クラプトン (ギター、ギターシンセサイザー、ボーカル)
スティーヴ・ルカサー (ギター)
リンジー・バッキンガム (ギター)
クリス・スティントン (キーボード、ピアノ、ハモンドオルガン、ローズ・ピアノ)
グレッグ・フィリンゲインズ (シンセサイザー)
ピーター・ロビンソン (シンセサイザー)
マイケル・オマーティアン (シンセサイザー)
ジェームズ・ニュートン・ハワード (シンセサイザー)
ドナルド・ダック・ダン (ベース)
ネイザン・イースト (ベース)
フィル・コリンズ (ドラム、パーカッション、シンセサイザー、ハモンドオルガン、ローズ・ピアノ、ボーカル)
ジェフ・ポーカロ (ドラム)
ジェイミー・オールディカー (ドラム)
ジョン・ロビンソン (ドラム)
レイ・クーパー (パーカッション)
テッド・テンプルマン (パーカッション)
レニー・カストロ (コンガ)
マーシー・レヴィ (ボーカル)
ジェリー・リン・ウィリアムス (ボーカル)
ショーン・マーフィー (ボーカル)

（注：上記は主な参加者であり、クレジットは多岐にわたります。）

このアルバムは、クラプトンのキャリアにおけるポップ路線への試み、レコード会社の意向による制作体制の変化、そしてその後の彼のサウンドを支える重要人物との出会いなど、様々な側面を持つ興味深い作品と言えるでしょう。

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