ビュージンゲン

ビュージンゲン：スイス領内のドイツ飛び地

ビュージンゲン（Büsingen）は、スイス領内に位置するドイツ・バーデン＝ヴュルテンベルク州の飛び地という、非常に特殊な地理的状況にある村です。ライン川沿いに位置し、面積は7.62平方キロメートル、人口は約1,450人という小さな村です。

行政と生活の複雑な構造

ビュージンゲンの行政はドイツの管轄下にあります。村にはスイスの警察官が駐在していますが、原則としてドイツの法律が適用されます。犯罪発生時には、ドイツ本土から警察官がスイス領内を通って駆けつけるという、少し変わった状況となっています。ただし、経済統制、農業、衛生といった分野ではスイスの法律が適用され、関税もスイスのものが用いられます。通貨はスイスフランが基本ですが、ユーロも広く流通しており、ドイツ領でありながら住民生活はスイスとの密接な関係の中で成り立っています。住民の多くは、隣接するスイスの都市シャフハウゼンで働いています。

国境の自由化

2009年、スイスがシェンゲン協定に加盟したことで、ビュージンゲンを含む地域では国境検査が撤廃され、ドイツ本土との往来が自由化されました。これにより、日常生活における利便性は大幅に向上しましたが、飛び地としての特異な状況は変わっていません。

飛び地形成の歴史

ビュージンゲンの住民は、歴史的にシャフハウゼンを中心とした生活圏を形成してきました。第一次世界大戦終結後の1918年には、住民投票で96%がスイスへの帰属を希望するという結果が出ています。しかし、スイス側がドイツに渡す代替地を確保できなかったため、スイスへの編入は実現しませんでした。

1956年には、西ドイツ政府がビュージンゲンと本土を結ぶ農地を買収し、飛地を解消しようと試みましたが、スイス側の反対もあり、この計画は頓挫しました。最終的に、1967年にスイスと西ドイツの間で締結された条約により、ビュージンゲンは正式に西ドイツ領（現在のドイツ領）として存続することが決定しました。このような経緯を経て、ビュージンゲンは現在もスイス領内にあるドイツの飛び地として存在しています。

まとめ

ビュージンゲンは、行政的にはドイツに属しながらも、日常生活や経済活動においてはスイスとの結びつきが非常に強いという、独特な立ち位置にあります。その歴史的背景や複雑な法制度、住民の生活実態など、多くの側面から興味深い事例と言えるでしょう。

関連情報として、同様にスイス領内にあるイタリアの飛び地であるカンピョーネ・ディターリアも存在します。



ビュージンゲン公式ウェブサイト（ドイツ語）

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