ビルベリー

ビルベリー：知られざる森の恵み

ビルベリーは、ツツジ科スノキ属に属する低灌木で、ヨーロッパを中心に広く分布しています。その小さな青紫色の果実は、ブルーベリーよりも濃厚な味わいを持ち、古くから食用や薬用として利用されてきました。

ビルベリーとは

ビルベリー（Bilberry）は、主にセイヨウスノキ（Vaccinium myrtillus L.）を指しますが、クロマメノキなどいくつかの近縁種を含みます。ホワートルベリー、ウィンベリー、ブレーベリー、ヨーロッパブルーベリーなど、様々な別名で呼ばれることもあります。ブルーベリーと混同されがちですが、ビルベリーはブルーベリーの一種であり、より野生に近い性質を持ちます。

ビルベリーの種類

ビルベリー類は、スノキ属のいくつかの近縁種を含んでいます。

セイヨウスノキ (Vaccinium myrtillus L.): 一般的なビルベリー
クロマメノキ (Vaccinium uliginosum L.): 湿地に生息
Vaccinium caespitosum Michx.: 小型
Vaccinium deliciosum Piper
Vaccinium membranaceum
クロウスゴ (Vaccinium ovalifolium)

ビルベリーの特徴

ビルベリーは、高さ20cm～60cm程度の落葉低木で、ブルーベリーよりも小さく、より風味豊かな果実をつけます。果肉は赤色または紫色で、生の果実を食べると口や指が染まるのが特徴です。ブルーベリーが房状に実をつけるのに対し、ビルベリーは単独または対になって実をつけます。また、ブルーベリーに比べて栽培が難しく、ほとんどが野生のものを採取しています。

ビルベリーの収穫と利用

ビルベリーは、主に北欧や東欧、イギリスなどで野生のものが採取されます。フィンランドでは、森で自由に採取することができ、ジャムやパイなどの料理に使われます。アイルランドでは、7月の最終日曜日にビルベリーを採取する伝統があります。

ビルベリーの果実は、生で食べるだけでなく、ジャム、ジュース、リキュール、デザートなど、様々な用途に利用されます。特に、フランスやイタリアではリキュールのベースとして、ブルターニュではクレープの風味付けとして人気があります。

ビルベリーの医薬用途の可能性

ビルベリーは、視力回復や動脈硬化予防、抗炎症作用など、様々な健康効果が期待されていますが、科学的な根拠はまだ十分ではありません。アメリカ国立補完統合衛生センター（NCCIH）は、ビルベリーの健康効果を支持する科学的根拠は不十分であるとしています。

ビルベリーが目に良いと言われるようになったのは、第二次世界大戦中にイギリス空軍のパイロットが夜間視力を高めるためにビルベリージャムを摂取したという逸話が広まったためですが、これはプロパガンダであったという説もあります。ただし、ビルベリーは抗酸化作用を持つアントシアニンを豊富に含んでおり、今後の研究による効果の解明が期待されています。

注意点

ビルベリーの葉には比較的高濃度のクロムが含まれており、人体に有害である可能性が指摘されています。そのため、葉の摂取は避けるべきです。

まとめ

ビルベリーは、その風味豊かな果実と、秘められた健康効果への期待から、世界中で愛されている植物です。野生の恵みを大切にしながら、その可能性を追求していくことが重要です。

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