ビル・タウィール

ビル・タウィール

ビル・タウィール（بيرطويل、英語表記：Bir Tawil）は、エジプトとスーダンの国境近くに存在する無主地です。興味深いことに、この地域はどちらの国からも領有権が主張されていないため、地球上でも珍しい土地となっています。以下では、ビル・タウィールの地理的特性や歴史、領有権の問題について詳しく見ていきます。

地理

ビル・タウィールは、北側にエジプト、南側にスーダンに接しています。周囲は砂漠で構成されており、境界線はほぼ直線的で、北は北緯22度線、南は Jabal Bartazuga（標高410m）と Jabal Hesmet 'Omar（標高570m）の間を結んでいます。また、この地域にはタウィール山（標高459m）や、東部に位置するJabal Ḩajar az Zarqā'（標高662m）があり、自然の特徴も豊かです。さらに、地域の南部にはワジ・タウィール（Khawr Abū Bard）という川が流れています。

歴史

ビル・タウィールの歴史は1899年に始まります。この年、イギリスはエジプトとスーダンの共同統治を導入し、この地域を保護国エジプト王国の一部としました。この際、エジプトとスーダンの間に新たな境界線が設定され、ビル・タウィールはスーダン側の管理下に置かれました。1902年に、イギリスは別の行政境界を设定し、ビル・タウィールをエジプト側に編入することに決定しました。これは、アスワンに拠点を持つアバブダ人の遊牧民がこの地域を利用していたため、地理的にも文化的にもエジプトの方が近かったからです。

この時期に、ビル・タウィールの東北側にあたるハラーイブ・トライアングルもスーダン側に編入されたため、両国の間に領有権を巡る対立が生じました。特に、この地域の帰属問題は現在まで続いており、エジプトは1899年の境界線を根拠に主張し、スーダンは1902年の境界線を支持しています。

帰属問題

ビル・タウィールの領有権の問題はハラーイブ・トライアングルの問題と密接に関連しています。エジプトが主張する境界線ではビル・タウィールはエジプト領内に含まれず、逆にスーダンが主張する境界線でも同様です。このように、両国がそれぞれの主張を持っているため、ビル・タウィールはどちらの国の領土にも属さない状態が続いています。特に、ビル・タウィールはハラーイブ・トライアングルと比較して面積が小さく、重要視されていないため、お互いに見放されています。

加えて、ビル・タウィールにはエジプトやスーダンを通らないと到達できないため、他国がこの地を自国の領土と宣言することは難しくなっています。この結果、ビル・タウィールは「どの国のものでもない」特異な場所として世界的にも知られるようになりました。

この地域においては、いくつかの個人がミクロネーションとしての「建国」を宣言する試みを行っており、特にアメリカ人のジェレマイア・ヒートンは2014年に北スーダン王国を設立すると宣言しましたが、これを正式に承認した国は存在しません。ビル・タウィールは、無主地としての象徴的な存在となっているのです。

まとめ

ビル・タウィールはエジプトとスーダンの間に位置する無主地であり、地理的・歴史的な背景から今なお領有権が未解決の状態にあります。国際的には特異な存在として認識されており、その背景や関連する問題は今後も注目されることでしょう。

もう一度検索