ビル・ブラック

ビル・ブラック：ロックンロールの黎明期を支えたベーシスト

ビル・ブラック（本名：ウィリアム・パットン・ブラック・ジュニア、1926年9月17日 - 1965年10月21日）は、アメリカの伝説的なミュージシャンであり、ベーシスト、そしてバンドリーダーとして活躍しました。特に、1950年代にエルヴィス・プレスリーの初期のバックバンドでスコティ・ムーアと共に演奏したことで知られています。1959年には自身のバンド「ビル・ブラック・コンボ」を結成し、インストゥルメンタル音楽で大きな成功を収めました。彼のキャリアと生涯を詳しく見ていきましょう。

生い立ちと初期のキャリア

1926年9月17日、テネシー州メンフィスで9人兄弟の長男として生まれたビル・ブラックは、幼い頃から音楽に親しんでいました。13歳で父親手製の楽器で演奏を始め、16歳には地元のクラブでギタリストとして活動を始めました。1940年代半ばには兵役のためバージニア州へ渡り、従軍中にエヴリンと結婚し、3人の子供をもうけました。除隊後、メンフィスに戻り、ファイヤーストーン・タイヤで働きながらセミプロとして音楽活動を続けました。

1952年、ギタリストのスコティ・ムーアと出会い、意気投合した二人は行動を共にします。ジョニー・バーネット・トリオ結成前のドーシー・バーネットのバックバンドを務めたこともあります。

スターライト・ラングラーズ時代

1952年、スコティ・ムーアをリーダーとして「スターライト・ラングラーズ」を結成。メンバーはビルの職場であるファイヤーストーンの同僚を中心に構成されました。

• - Millard Yeow (フィドル)
• - Tommy Seals (スティールギター)
• - Scotty Moore (ギター)
• - Bill Black (ベース)
• - Doug Poindexter (ボーカル)
• - Clyde Rush (ギター)

（注：メンバーは固定ではなく、随時入れ替わった。確認されるプレイヤーを記載）

スコティ・ムーアは当時を振り返り、「メンフィスのホンキートンクに出演していた際、サム・フィリップスから電話を受け、会いにいった。レコードを作る必要性を感じ、サムと親しくなった。サムは熱心な働き手を求めており、私たちはバンドを彼に寄贈したような気持ちで働いた。結果、レコードを出してくれたが、50枚か100枚程度しか売れなかった」と語っています。

ブルームーン・ボーイズとエルヴィス・プレスリーとの出会い

1953年夏、メンフィスのサン・レコードで、エルヴィス・プレスリーが母親へのプレゼントとしてレコードを制作した際、その歌声に可能性を感じた従業員のマリオン・ケイスカーは、彼の名前を「エルヴィス・プレスリー グッド・バラード・シンガー」とメモしました。1954年6月27日、サム・フィリップスはこの未知の才能を試すべくオーディションを実施。ビルとスコティが呼ばれ、リハーサルが始まりました。スコティは「エルヴィスの名前を聞いたとき、SF小説の登場人物かと思った」と語っています。

昼の仕事を終えた3人は、サン・スタジオでセッションを重ね、「ザッツ・オールライト・ママ」がA面に決定。プレイバックを聞いたビルとスコティは、このレコードが発売されたらメンフィスから追い出されるだろうと不安を感じたそうです。

B面曲「ブルー・ムーン・オブ・ケンタッキー」は、ビルがブルーグラスミュージシャンのビル・モンローを真似てファルセットで歌い出したことから、偶然生まれたそうです。デューイ・フィリップスがラジオでこの曲を放送したところ、大きな反響を呼び、サン・レコードは予約注文を5,000枚も受けました。

1954年10月16日、3人は「ルイジアナ・ヘイライド」に出演し、1年間の出演契約を結びました。しかし、エルヴィス偏重のギャランティー配分や、スターライト・ラングラーズの他のメンバーとの軋轢からバンドは解散。1955年11月、エルヴィスがRCAヴィクターと契約する際、ビルとスコティはロイヤリティ契約から除外され、レーベルの記載からも名前が消え、専属ミュージシャンとして録音と公演をサポートする形になりました。1958年、ギャランティーの不満からマネージャーのトム・パーカーに賃上げを要求しますが、解雇を言い渡されました。

ビル・ブラック・コンボの結成と成功

1959年、ビルはメンフィスに戻り、エース・アプリエンスで働きながら新グループ結成を計画しました。旧知の歌手レイ・ハリスの紹介でハイ・レコードと契約し、「ビル・ブラック・コンボ」を結成。

• - Bill Black (ベース)
• - Martin Wills (テナーサックス)
• - Reggie Young (エレキギター)
• - Jerry Arnold (ドラムス)

1959年、「スモーキー パート2」がR&B部門で1位、ポップ部門で17位を獲得し、ハイ・レコードにとって最初のメジャーヒットとなりました。1960年には「ホワイト・シルバー・サンズ」がR&B部門で1位となり、ゴールドディスクを受賞しました。1961年には映画「Teenage Millionaire」に出演し、「エド・サリヴァン・ショー」にも出演するなど活躍を続けました。1962年にはメンフィスにリン・ルー・スタジオをオープンさせます。1964年にはザ・ビートルズの北米ツアーのオープニングアクトを務めましたが、ビルは体調不良のため参加できず、マネージャー兼ベーシストのボブ・タッカーが代役を務めました。

死と遺産

1965年10月21日、ビル・ブラックは脳腫瘍により亡くなりました。葬儀にはエルヴィスは混乱を避けるため欠席しましたが、後に遺族と私的に対面しています。ビル・ブラック・コンボはメンバーによって継続され、サウンドをカントリー音楽に変化させ、1976年には「ビルボード・カントリー・インストロメンタル・グループ・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。2009年4月4日には、ロックンロールの殿堂入りを果たしました。

エピソード

ブラック家は1942年からメンフィスのローダーデールに居住。父ウィリアムはメンフィス・ストリート鉄道の運転手で、母ルディはプレスリー家のグラディスと親しい間柄でした。弟のジョニー・ブラックもベーシストであり、ジョニー・バーネット・トリオに参加したことがあります。娘のナンシー・ショックリーは、父ビル・ブラックの使用していたベースを所有するポール・マッカートニーと対面しました。

使用楽器

スターライト・ラングラーズ時代にはメーカー不明のコンサート・シェイプを使用。1954年10月にケイ社製マエストロM-1を120ドルで購入。このベースは、ボディのエッジに白いテープが貼られ、1956年後半から57年初めにかけてブラウンからゴールドに塗装されました。1962年にマイク・リーチに売却された後、1979年にリンダ・マッカートニーを経て、ポール・マッカートニーの手に渡りました。ポールは、このM-1をライブやレコーディングで使用しています。1957年からはフェンダー社のプレジョン・ベースを使用しました。2010年にはオリジナルケース付きでオークションに出品され、1万157.5ドルで落札されています。

ディスコグラフィー

（ディスコグラフィーの情報は必要に応じて追加）

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