ビレット (紋章学)

紋章学におけるビレット（Billet）とは

ビレット（英: Billet、仏: Billette）は、紋章学で使用される図案の一種で、縦に細長い長方形のチャージを指します。これはサブオーディナリー、つまり紋章を構成する基本的な要素の一つとして分類されます。

ビレットの形状と起源

ビレットの形状が具体的に何を表しているのかについては、いくつかの説が存在します。有力な説としては、建築材料である煉瓦を象徴しているというものがあります。しかし、羊皮紙の巻物や、フランス語で短い手紙を意味する「ビレット」という言葉から、書かれた手紙を表現しているという解釈も存在します。また、その形状から、柱の基礎となる鉄板や金属片、あるいは単なる棒切れや焚き木を表しているという説もあります。これらの説の中で、どれが定説として確立されているわけではありません。

ビレットにはいくつかのバリエーションが存在します。例えば、ビレットを横に倒したものは「ビレット・クーシェ (Billet couchés)」と呼ばれます。また、正方形のビレットは「スクウェア・ビレット (Square billet)」と呼ばれることがあります。

ビレッティー（Billetty）とは

ビレッティー（英: Billetty, Billety, Billeté, Billettée、仏: Billetté）は、フィールド（紋章の背景）に無数のビレットを散りばめた模様のことです。この配置は、数や位置を特に指定せず、あたかも見えない斜め格子の上にビレットを置くかのような「セミー (Semy 又は Semé)」と呼ばれる方法で行われます。ただし、フィールドの形状に合わせて配置を調整したり、他のチャージ（紋章に描かれる具体的な図像）と重ならないように多少散らし方を変えても、全体としてビレッティーとして認識できれば問題ありません。「セミー・オブ・ビレッツ (semé of billets)」と記述しても、同じ図柄を表すことになります。

ビレットの使用例

ビレットを使用した紋章として特に有名なのは、ドイツ西部に起源を持ち、神聖ローマ皇帝をも輩出した名門、ナッサウ家の紋章です。また、珍しい例としては、フィールドではなく、チャージとして配置されたライオンの上にビレットを散りばめた、イングランド・ヨークシャーのアンスケテル・バルマー (Ansketell Bulmer of Yorkshire) の紋章があります。

参考文献

森護 (1996年8月23日). ヨーロッパの紋章 ―紋章学入門― シリーズ 紋章の世界 I (初版 ed.). 東京都渋谷区: 河出書房新社. ISBN 4-309-22294-3
森護 (1998年5月10日). 紋章学辞典 (初版 ed.). 東京都千代田区: 大修館書店. ISBN 4-469-01259-9
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Cussans, Jhon E. (2010-06-08) [1893] (英語). Handbook of Heraldry (4th edition ed.). Kissinger Publishing's Rare Reprints. ISBN 0-7661-7338-0
Slater, Stephen (1999, 2004) (英語). THE COMPLETE BOOK OF HERALDRY. London, UK: Hermes House. ISBN 0-681-97054-5

関連項目

紋章学
紋章

外部リンク

コウブチ紋章資料館
紋章学総合サイト
中世ヨーロッパの風景 「紋章について」
Dragon's Lair「ヨーロッパ紋章学」

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