ビートポップス

テレビディスコティクショー ビートポップス

『テレビディスコティクショー ビートポップス』は、1960年代後半、日本のテレビ黎明期においてフジテレビが制作・放送した画期的な洋楽専門の音楽番組です。フリーアナウンサーとして高い人気を得ていた大橋巨泉が司会を務め、当時の若者文化に深く根差した洋楽の世界をテレビを通じて広く紹介しました。

概要

この番組は、フジテレビのスタジオから生放送されるというスタイルを採用していました。従来の音楽番組とは一線を画し、ラジオで人気を博していたディスクジョッキー（DJ）のスタイルをテレビの世界に持ち込むことを試みました。番組独自のコンセプトとして「テレビ・ディスコティクショー」と銘打ち、単に楽曲を紹介するだけでなく、様々なエンターテインメント要素を盛り込むことで、視聴者参加型のライブ感を創出しました。

番組の進行は、独自の基準で選定されたヒットパレードの紹介を中心に据えつつ、その間に多様な企画が挟み込まれました。レコード音楽に合わせて視聴者がスタジオで自由に踊るセッションや、将来のDJを発掘するアマチュア・ディスクジョッキー・コンテスト、最新のファッションを紹介するコーナーなど、音楽を核としながらも、当時のユースカルチャー全般を取り上げる意欲的な内容でした。

番組制作には、河野洋、田村隆、奥山コーシンといった放送作家陣が携わり、多角的な企画構成を支えました。

映像面では、放送期間を通じてモノクロ放送であり、カラー化されることはありませんでした。

提供

番組開始当初は、サンスター歯磨（現：サンスター）を展開するサンスターシオノギによる一社提供番組でしたが、後に複数の企業が提供に加わる形に変更されました。

エピソード

司会の大橋巨泉による軽妙な語り口、特に彼が得意としたダジャレは番組の大きな特徴の一つであり、多くの視聴者に親しまれました。例えば、アメリカのフォークロックグループであるカウシルズを紹介する際には、「牛も知ってるカウシルズ」といったフレーズを用い、ジャズミュージシャンのドナルド・バードの楽曲「Amen」（アルバム『Fuego』B面収録）を紹介する際には「B面にあってもエーメンとはこれいかに」という言葉遊びを披露するなど、独特のユーモアを交えながらアーティストや楽曲を紹介しました。

番組に出演していた歌手の一人、麻里圭子に関するエピソードも知られています。当時、主に演歌歌手として活動していた彼女に対し、大橋巨泉が「演歌は似合わない」とポップスへの転向を勧めたとされています。この助言がきっかけの一つとなり、麻里圭子はポップス歌手としてのキャリアを本格的にスタートさせ、後にテレビドラマ『サインはV』の主題歌を担当するなど、新たな分野で活躍することとなりました。

また、番組のアイデンティティを象徴するタイトルロゴは、画家の金田全央が手掛けました。金田は番組内で実際に絵を描くライブペインティングを披露したほか、フジテレビが発行していた番組関連の小冊子「月刊ビートポップス」のイラストも担当し、番組の視覚的なイメージ形成に大きく貢献しました。

『テレビディスコティクショー ビートポップス』は、当時の日本のテレビ番組としては珍しい洋楽に特化したプログラムであり、ラジオDJの語りを導入するなど、その後の音楽番組に影響を与える可能性を秘めた意欲作でした。多彩な企画と司会者の個性、そして時代の音楽とカルチャーを反映させた内容は、多くの洋楽ファンや若者たちに支持されました。

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