ビートルズ・イン・イタリー

『ビートルズ・イン・イタリー』(Beatles In Italy)は、1965年11月12日にイタリアでリリースされたビートルズのベストアルバムです。このアルバムは、ヨーロッパツアーと映画『ヘルプ!4人はアイドル』の公開を機に、イタリア市場向けに急遽制作されました。

しかし、このアルバムは当初から様々な誤解を招く要素を含んでいました。まず、タイトルとジャケット写真です。タイトルはイタリアでのライブアルバムを思わせるものですが、実際にはスタジオ録音の音源のみを収録したコンピレーションアルバムです。ジャケット写真も、イタリアでの撮影されたものではなく、1964年のアメリカ・ワシントンD.C.でのコンサートの写真が使用されました。これにより、多くのファンがライブアルバムと誤解して購入することとなりました。

さらに、アルバムの音源は全て[モノラル]]で収録されています。これは、イタリア盤において一貫して守られた特徴です。一方、オランダ]や日本(1982年10月21日)などでの再発盤はステレオでリリースされていますが、一部楽曲は[[モノラル音源、またはモノラル音源を基にした擬似ステレオミックスで収録されているなど、複雑な経緯があります。例えば「アイ・フィール・ファイン」は、英国盤、日本盤の『ザ・ビートルズ1962年〜1966年』と同じく、冒頭にノイズと囁きが入ったバージョンが使用されています。

このアルバムの収録曲は、シングル「フロム・ミー・トゥ・ユー」から「涙の乗車券」までのヒット曲が中心です。レノン＝マッカートニーの作品が大半ですが、一部楽曲の作詞作曲者は異なります。楽曲の選定も、他のベスト盤と比較して独特の選曲となっています。

興味深いエピソードとして、ジョン・レノンが1970年の『ローリング・ストーン』誌のインタビューで、「イタリアでのライブアルバムがある。誰かが録音していたみたいだね」と発言したことが挙げられます。この発言とアルバムのタイトル、ジャケット写真から、多くのファンが『ビートルズ・イン・イタリー』をライブアルバムと思い込んでいたことがわかります。このアルバムは、ビートルズの歴史において、その特殊な経緯とファンの誤解によって、非常にユニークな位置を占めていると言えるでしょう。

『ビートルズ・イン・イタリー』は、ビートルズのベストアルバムの中でも異色の存在です。その背景にある商業戦略、そしてファンの誤解と期待、そして音源の特殊性など、様々な要素が絡み合い、今日まで語り継がれる作品となっています。まさに、ビートルズという世界的なバンドの歴史の中に埋もれながらも、独自の存在感を放っていると言えるでしょう。イタリア独自の事情、そして世界に広がったその影響は、音楽史における興味深い一例として、これからも研究の対象となる可能性を秘めていると言えるのではないでしょうか。

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