涙の乗車券

涙の乗車券：ビートルズの不朽の名曲

1965年4月、ビートルズはシングル「涙の乗車券」をリリースし、世界中で大ヒットを記録しました。この曲は、彼らの5枚目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『ヘルプ！』にも収録され、映画『ヘルプ！4人はアイドル』のサウンドトラックとして使用されたことでも知られています。

楽曲の構成と創作背景

レノン＝マッカートニー名義ですが、主にジョン・レノンが作詞作曲を手掛けました。曲の構成は、8小節ずつのヴァースとコーラスで構成されるAセクションと、9小節のブリッジで構成されるBセクションから成り、32小節形式を拡張した独特の構造を持っています。特にヴァースではA弦を切れ間なく弾き続けるドローンが用いられ、インド音楽の影響が伺えます。音楽評論家イアン・マクドナルドは、このドローンを「ラーガのよう」と評しています。

楽曲の最大の特徴は、テンポの変化が顕著なコーダ部分です。「My baby don't care」のリフレインが繰り返され、ヘヴィメタルの先駆けを思わせる重厚なサウンドが展開されます。レノン自身もこのコーダを気に入っており、「最も初期のヘヴィメタル・レコード」と語っていたそうです。 マクドナルドは、このコーダにレノンとジョージ・ハリスンによる初めてのLSD体験が影響しているのではないかと推測しています。

歌詞は、去っていく恋人への想いを歌ったものですが、具体的なインスピレーションは明かされていません。タイトル「涙の乗車券」は、ポール・マッカートニーによればワイト島行きの切符をもじったものですが、レノンはハンブルク時代の娼婦から渡された健康証明書を想起させると説明しています。

レコーディングと革新性

レコーディングは1965年2月15日、EMIレコーディング・スタジオで行われました。このセッションは、イギリスツアー終了後、ビートルズにとって初めてのレコーディングとなりました。特徴的なのは、ギターパートが初めてオーバーダビングされた点です。作家ウォルター・エヴェレットはこれを「ビートルズにとっての革命のはじまり」と評しています。

ジョージ・ハリスンによるリッケンバッカー・360/12を用いたギターリフは、リズムトラックの段階から含まれていました。このリフは、レノンが作った曲をメンバーに聴かせる際にコードを弾いている際にハリスンが思いついたもので、このふらついた印象がリンゴ・スターのドラムパターンにも影響を与えたとされています。

リリースと商業的成功

「涙の乗車券」は1965年4月9日にイギリスで、10日後にアメリカでリリースされました。『トップ・オブ・ザ・ポップス』などのテレビ番組で演奏され、プロモーションにも貢献しました。

イギリスでは全英シングルチャートで3週連続1位を獲得、アメリカでもBillboard Hot 100で1位を獲得するなど、世界的な大ヒットとなりました。3分を超える演奏時間を持つビートルズのシングルとしては初の作品であり、アメリカでは彼らがBillboard Hot 100で1位を獲得した3作目となり、4年連続でイギリス人アーティストが1位を獲得するという快挙を達成しました。

映画『ヘルプ！4人はアイドル』とプロモーション・フィルム

映画『ヘルプ！4人はアイドル』では、メンバーがスキーをするシーンで使用されました。また、1965年11月には、「涙の乗車券」、「デイ・トリッパー」、「恋を抱きしめよう」を含む4曲のプロモーションフィルムが撮影されました。この映像は、長らく幻の映像とされていましたが、後に『ザ・ビートルズ1』のDVD/Blu-rayに収録されました。

評価とレガシー

多くの音楽評論家から高い評価を受けています。『ニュー・ミュージカル・エクスプレス』誌のデレク・ジョンソンは「音の深さ」と「すさまじいドライブ感」を称賛し、イアン・マクドナルドは「心理的に深く、当時としては並外れた楽曲」と評しました。また、この曲はキンクスの「シー・マイ・フレンド」にも影響を与えたとされています。

『ローリング・ストーン』誌の「オールタイム・グレイテスト・ソング500」では第384位にランクインするなど、現在でも高い評価を得ています。

ライブ演奏とカバーバージョン

ビートルズは1965年のヨーロッパ・ツアーを始め、数々のライブで「涙の乗車券」を演奏しました。カーペンターズによるカバーバージョンも有名で、Billboard Hot 100で54位を記録しました。その他にも、メアリー・ウェルズ、ザ・ビーチ・ボーイズ、ジョージ・マーティン、ヴァニラ・ファッジなど、多くのアーティストがカバーしています。

まとめ

「涙の乗車券」は、革新的なサウンドと商業的成功を収めた、ビートルズを代表する楽曲です。その独特の構成、レコーディング手法、そして多様な解釈は、今もなお多くの音楽ファンを魅了し続けています。

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