ピアノソナタ第3番 (シューマン)

ロベルト・シューマン ピアノソナタ第3番 ヘ短調 作品14

ロベルト・シューマンのピアノソナタ第3番 ヘ短調 作品14は、1835年に作曲され、ピアニストのイグナーツ・モシェレスに献呈されました。初版は1836年9月に「管弦楽のない協奏曲」として出版されましたが、1853年10月にスケルツォ楽章が追加され、「ピアノソナタ第3番」として改訂されました。この改訂により、作品番号が若い第2番よりも後に位置づけられることになりました。

このソナタは、元のタイトルが示すように、技巧的で華やかな作品です。全曲を通じて、音階の下降音型と付点リズムのモチーフが重要な役割を果たしています。初版では2つのスケルツォを含む5楽章構成でしたが、出版社の意向により2つのスケルツォが削除され3楽章構成となりました。後に1つのスケルツォが復活し、もう1つは遺作として出版されました。

曲の構成

第1楽章 Allegro brillante

ヘ短調、4分の4拍子。管弦楽を思わせる、付点リズムの下降音型（C-B-A♭-G-F）のモチーフで開始されます。このモチーフは全曲を貫き、ピアノソロによる華やかな分散和音のパッセージへと続きます。これらの要素が第1楽章だけでなく、全曲を通して使用されています。第1主題は分散和音の伴奏を持つ下降音型で、その展開から和声的な付点リズムの第2主題へとつながります。コデッタには上昇音形が登場し、これも重要なモチーフとなります。展開部ではこれらの要素が複雑に絡み合い、再現部へと続きます。コーダも長大です。1853年の改訂では、初版の華麗な部分が一部変更され、より和音的な付点リズムに変更されました。

第2楽章 Scherzo, Molto commodo

変ニ長調、4分の3拍子。三部形式のスケルツォで、1853年の改訂で初めて追加されました。主題の前半は下降音型、後半は上昇音型で構成されています。中間部では、分散和音が加わり、山型の線を描くように3つの要素が融合します。

第3楽章 Quasi Variazoni, Andantino de Clara Wieck

ヘ短調、4分の2拍子。シューマンの妻となるクララ・ヴィークの主題による変奏曲です。主題はクララの作品2の第7曲を基にしており、下降音型を中心としています。付点リズムや和声的な部分、後半には上昇音型が使用され、ソナタの基本モチーフと一致しています。主題は半休止したまま変奏へと続き、4つの変奏ではテンポや拍子、リズムが変化します。最後に長大なコーダが付きます。初版では、現在の形から2つの変奏が削除され、変奏の順序も変更されました。

第4楽章 Prestissimo possibile

ヘ短調、4分の2拍子。この楽章は、短調で始まり、最後に長調に転じます。指示通りにできるだけ速く演奏され、分散和音で鍵盤上を駆け巡ります。左右の手が激しく対話し、その中から美しい旋律が浮かび上がります。この楽章はソナタの最後を飾るにふさわしい、きらびやかな音楽です。初版では、途中で拍子が16分の5拍子に変化します。

スケルツォ（遺作） Scherzo. Vivacissimo

ヘ短調、8分の6拍子。このスケルツォは、本来は現在の第2楽章の後に置かれる予定でしたが、シューマンの死後に遺作として出版されました。ソナタの核となる下降音型は含まれていませんが、ヘ長調のトリオの低音部には、上昇音系（C-D-E-F）が登場します。音符が小節線をまたぐ、シューマンらしい曲調が特徴です。

外部リンク

* ピアノソナタ第3番 (初版（3番目のクララ校訂版）、遺作スケルツォ及び改訂版)の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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