ピアノソナタ第7番 (モーツァルト)

ピアノソナタ第7番 ハ長調 K. 309 (284b)

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトによって作曲された《ピアノソナタ第7番 ハ長調 K. 309 (284b)》は、彼の数ある鍵盤楽器のためのソナタ作品の中でも、初期から中期の過渡期に位置づけられる重要な作品の一つです。広く知られているケッヘル番号では309として分類されていますが、かつての旧版ケッヘル目録では284bという番号が用いられていました。

作曲の背景と出版

このソナタは、モーツァルトが母親のアンナ・マリア夫人とともに各地を旅行していた時期、具体的には1777年の10月から11月にかけて作曲されました。この旅行では、当時のヨーロッパにおける主要な音楽都市であったマンハイムやパリを訪れており、モーツァルトはこの期間に多くの新たな音楽的刺激を受け、その後の彼の作風に大きな影響を与えたとされています。

本作品は、マンハイムに滞在中に生み出されました。このソナタが作曲されるに至った背景として、マンハイムの宮廷楽団のコンサートマスターを務めていた著名な音楽家、クリスティアン・カンナビヒの娘であるローザ・カンナビヒに献呈されたことが挙げられます。彼女は才能あるピアニストであり、モーツァルトは彼女のためにこのソナタを作曲したと考えられています。

同じく1777年の同時期には、《ピアノソナタ第9番 ニ長調 K. 311 (284c)》（旧版では第8番）も作曲されています。これらのソナタは、モーツァルトが初期のイタリア風様式から脱却し、より洗練された独自の古典派様式へと移行していく過程を示す作品群として位置づけられています。

作曲から数年を経た1781年、このソナタはパリで出版されました。この際の出版は、「作品4」として、《ピアノソナタ第8番 イ短調 K. 310 (300d)》（旧版では第9番）および前述の《ピアノソナタ第9番 ニ長調 K. 311 (284c)》とともにまとめられて行われました。これは、これら3つのソナタが作曲者自身にとって、一連の作品として意図されていた可能性を示唆しています。

楽曲構成

《ピアノソナタ第7番 ハ長調 K. 309》は、古典派ソナタの標準的な形式である全3楽章で構成されています。全体の演奏に要する時間は、概ね18分程度です。

各楽章の構成は以下の通りです。

1. 第1楽章：アレグロ・コン・スピーリト
調性：ハ長調
拍子：4分の4拍子
形式：ソナタ形式
この楽章は「アレグロ・コン・スピーリト」、すなわち「活気をもって、精神的に」という速度および性格指示が与えられており、快活で力強い音楽が展開されます。提示部、展開部、再現部という典型的なソナタ形式の構造に従って書かれています。

2. 第2楽章：アンダンテ・ウン・ポコ・アダージョ
調性：ヘ長調
拍子：4分の3拍子
形式：三部形式
速度指示「アンダンテ・ウン・ポコ・アダージョ」は、「アダージョよりもやや速く、アンダンテよりもやや遅く」という意味で、穏やかで表情豊かな楽章であることを示唆しています。主部と中間部からなる三部形式（ABA形式）が用いられています。

3. 第3楽章：ロンドー：アレグレット・グラツィオーソ
調性：ハ長調
拍子：4分の2拍子
形式：ロンド形式
終楽章は「ロンドー」と題され、「アレグレット・グラツィオーソ」、すなわち「やや速く、優雅に」という性格が与えられています。快活な主要主題が繰り返し現れるロンド形式によって構成されており、軽やかで魅力的な音楽でソナタを締めくくります。

このソナタは、若きモーツァルトの創造性と技法が随所に光る作品であり、彼のピアノソナタの中でも重要な位置を占めています。

楽譜について

本作品の楽譜は、インターネット上の国際楽譜ライブラリープロジェクト（IMSLP）などのサイトを通じて入手することが可能です。

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