ピアノ三重奏曲 (ドビュッシー)

ピアノ三重奏曲 ト長調

クロード・ドビュッシーが18歳という若さで作曲した「ピアノ三重奏曲 ト長調」は、ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための室内楽作品です。この作品は、ドビュッシーの初期の作品であり、彼の音楽スタイルが確立される以前の、貴重な習作と位置づけられています。長らくその存在が忘れられていましたが、20世紀後半になって自筆譜の一部が発見され、再び演奏されるようになりました。

作曲の背景

1880年の夏、ドビュッシーは、チャイコフスキーのパトロンであったフォン・メック夫人の長期旅行に、娘の音楽教師兼ピアニストとして同行しました。この旅行中、ドビュッシーはメック夫人とのピアノ連弾や、夫人が雇っていたポーランド人のヴァイオリニスト、ヴワディスワフ・パフルスキとの作曲活動を行いました。また、チャイコフスキーの交響曲を読譜するなど、チャイコフスキーの音楽に触れる機会も多くありました。この旅行の終盤、チェリストのピョートル・ダニーリチェンコが加わり、メック夫人の邸宅でトリオが結成され、この作品が作曲されました。

発見の経緯

長年、この作品は、ドビュッシーが1880年の夏に作曲した『ボヘミア舞曲』を除き、ほとんどが失われたと考えられていました。しかし、1982年、ピアニストのモーリス・デュメニルの遺品の中から、ドビュッシーの自筆譜が発見されました。この自筆譜は、ドビュッシーの未亡人エンマ・バルダックからデュメニルに贈られたものでした。ただし、第4楽章の一部は欠落しており、チェロパートの写譜を参考に補完されています。

楽器編成と楽章構成

この作品は、以下の楽器編成で構成されています。

ヴァイオリン
チェロ
ピアノ

楽章構成は以下の通りです。

1. Andantino con moto allegro
2. Scherzo: Moderato con allegro
3. Andante espressivo
4. Finale: Appassionato

演奏時間は20～25分程度です。

評論

音楽評論家のハロルド・C・ショーンバーグは、この作品を「甘く感傷的で、サロンのような雰囲気を持つ」と評し、ドビュッシーの初期のスタイルとは異なると指摘しました。一方で、BBCの評論家シャーロット・ガードナーは、この作品の楽しさを認め、特に第2楽章のピチカートを評価しました。彼女は、ブロドスキー弦楽四重奏団とピアニストのジャン＝エフラム・バヴゼによる演奏を、「ゆったりとしてロマンティックで、美しく、軽やかでクリアなテクスチャーを持っている」と評しました。

脚注

注

出典

関連項目

弦楽四重奏曲 (ドビュッシー))
ピアノ三重奏曲 (ラヴェル))

参考文献

舘亜里沙 (2015年6月12日). “ドビュッシー : [ピアノ]]三重奏曲 ト長調”. [ピティナ・ピアノ曲事典. 2020年7月31日閲覧。
楽譜 Debussy: Kalviertrio G-dur（Ellwood Derr編集、G. Henle Verlag、1986年）
楽譜 Debussy: Trio pour piano, violon et violoncelle; Pièce pour violoncelle et piano dite nocturne et scherzo; Intermezzo pour violoncelle et piano; Quatuor（Roy Howat、Peter Bloom編集、Durand、2015年）

外部リンク

Piano Trio in G majorの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)
Debussy: Piano Trio in G major (Satomi Hayakawa (Piano), Chihiro Inda(Violin) & Yasutaka Takeuchi (Cello)) - Yasutaka Takeuchi (YouTube). 2017-03-08.
* Moore, John Noell. “Program Notes - Debussy. Piano Trio in G”. The Chamber Music Society of Williamsburg. 28 August 2008時点のオリジナルよりアーカイブ。3 August 2013閲覧。

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