ピアノ協奏曲 (ジョリヴェ)

アンドレ・ジョリヴェ：ピアノ協奏曲

アンドレ・ジョリヴェによるピアノ協奏曲は、1950年にその姿を現した、作曲家円熟期の重要な作品です。最初の公開演奏は1951年6月19日、ストラスブール音楽祭の舞台で、ジョリヴェ自身の指揮、リュセット・デカーヴのピアノ独奏によって実現しました。楽譜はその後、1953年にウジェル社から出版されています。

作曲家とその背景

ジョリヴェは様々な師に学びましたが、最終的にエドガー・ヴァレーズの指導のもとでその音楽教育を深め、彼から多大な影響を受けました。その影響は特に、未知の音素材の探求や、現代社会における騒音を音楽的に捉えようとする試みに顕著でした。画家の父とピアニストの母のもとに生まれた芸術的な家庭環境も相まって、ジョリヴェは自らの内に宿る人間性や宗教的なテーマを音で表現するため、独自の音楽語法を研ぎ澄ませていったのです。

ジョリヴェにとって、協奏曲という形式は、独奏楽器とオーケストラとの「協調」であると同時に、解決に至るまでの「闘争」や「対立」をも包含するものでした。彼はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第4番」の第2楽章に、その理想的な姿を見出していたと言われます。彼は自身の音楽表現において協奏曲を極めて重要視し、1947年の「オンド・マルトノ協奏曲」以来、1974年にこの世を去るまでに合計12曲もの協奏曲を世に送り出しています。

作曲の経緯と初演の反響

このピアノ協奏曲は、フランス国立放送からの委嘱を受けて作曲されました。フランスの旧植民地を主題とした楽曲の依頼に対し、ジョリヴェは以前から構想していた東洋や熱帯地域を想起させる音楽的アイデアを活用することを決めます。このため、発表に向けて1949年から既存の素材を再構成する作業に取り組み、翌1950年に作品を完成させました。

ストラスブールでの初演に続いてパリで行われた公演は、イーゴリ・ストラヴィンスキーの『春の祭典』初演時以来と言われるほどの大きなセンセーションを引き起こしました。作品の持つ異国情緒や強烈なリズム、音響は一部の聴衆に衝撃を与え、演奏を妨害しようと試みる者まで現れました。しかし、指揮者のガストン・プーレが巧みに場を収め、作品は混乱の中で最後まで演奏されきったと伝えられています。

作品の評価と特徴

今日、この作品はジョリヴェの代表作の一つとして高く評価されており、彼の作品の中でも最も知られた曲の一つとなっています。1951年にはパリ市音楽大賞を受賞、1958年には著名な振付家ジョルジュ・スキビンによってバレエ作品としても上演されました。

作品の根底にある熱帯的な感覚や、後述する多様な打楽器群の使用といった特徴から、かつては俗に「赤道コンチェルト」とも呼ばれましたが、作曲者自身は特定の地域を指すのではなく、「西洋・東洋を問わず、すべての民族が理解できる世界的なスタイル」の探求のもとにこの曲を生み出したと述べています。

楽器編成は、ピアノ独奏に加え、通常のオーケストラ楽器に加えてアルトサクソフォーン、イングリッシュホルン、そして特に多種多様な打楽器群（ティンパニ、ヴィブラフォン、木琴、鐘、チェレスタ、大小様々な太鼓、ウッドブロック、マラカス、タンバリン、トライアングル、むち、クロタル、シンバル各種、ゴング、タムタム、グルロなど）を含んでおり、その色彩豊かな響きが作品の大きな特徴となっています。演奏時間は約23分半です。

楽曲構成

全3楽章で構成されています。

第1楽章：アレグロ・デチーゾ（4/4拍子）

自由なソナタ形式に基づいています。冒頭の力強くけたたましい序奏に続き、ピアノと打楽器が刻む躍動的なリズムの上に、オーボエが主要主題を提示します。やがてピアノから別の主題が登場し、展開部ではこれら二つの主題が対位法的な処理も交えつつ、勢いを失うことなく展開されます。序奏の咆哮が再び現れると再現部へと移行しますが、ここでは新しい旋律も導入されます。これらの主題と冒頭の動機を基にしたコーダを経て、一気に楽章を閉じます。

第2楽章：センツァ・リゴーレ（4/4拍子）

三つの主要な主題と、それぞれの変奏によって構成されます。静かな序奏に続いて現れる最初の主題は、四つの変奏を伴います（最後の変奏は第二主題提示後に置かれます）。第二の主題は日本の雅楽を思わせる旋法に影響を受けており、一度変奏されます。第三の主題が現れた後、これら三つの主題が組み合わされ、音楽的な頂点を築き上げます。その後は静寂を取り戻し、神秘的な響きの中で楽章は終わりを迎えます。

第3楽章：アレグロ・フレネティーコ（2/2拍子）

自由なロンド形式が用いられています。簡潔な序奏に導かれ、まずピアノが単独でロンド主題を提示します。次に登場する第二の主題はクラリネットによって奏でられます。打楽器とピアノのみによる特徴的な部分を経て、第三の主題が提示されます。再び第一主題が現れると、音楽は荒々しいクライマックスへと向かいます。その後、再び打楽器のみによるパッセージが現れ、冒頭の序奏で聞かれた音形が回帰することによって、全曲の幕が閉じられます。

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