ピアノ協奏曲第1番 (ショスタコーヴィチ)

ピアノ協奏曲 第1番 ハ短調 作品35

ディミトリー・ショスタコーヴィチによって1933年に作曲されたこの作品は、彼の番号付きピアノ協奏曲における最初のものにあたります。その正式名称は『ピアノとトランペット、弦楽合奏のための協奏曲 ハ短調』とされ、独奏楽器としてピアノに加えてトランペットが用いられている点が特徴です。

作曲の背景と初演

1927年、ショスタコーヴィチはワルシャワで開催されたショパン国際ピアノコンクールにソヴィエト代表として参加しました。ピアニストとしても一定の成功を収めたいと願っていた彼は優勝を目指しましたが、結果は名誉賞にとどまります。この結果に深く失望した経験は、彼のピアニストとしての将来に対する野心に影響を与えました。ピアノでのキャリアにおける挫折を機に、ショスタコーヴィチは自身のエネルギーを作曲活動に集中的に注ぎ込む決意を固めます。1930年代に入っても、ショパンやプロコフィエフのピアノ協奏曲のソリストとして精力的に活動を続けていましたが、ピアニストと作曲家という二つの道を同時に充実させることの難しさを痛感し、およそ2年間、公の演奏活動を休止しました。1933年に演奏活動を再開するにあたっては、自身の作品を演奏する場合にのみステージに立つという方針を採ることで、この問題を解決しようとしました。

1920年代後半から1930年代にかけて、ショスタコーヴィチは驚くべき速さと情熱をもって作曲に打ち込み、多岐にわたる作品群を生み出しました。この時期に完成された主要な作品には、ピアノ独奏のための『24の前奏曲』、オペラ『ムツェンスク郡のマクベス夫人』、そしてこのピアノ協奏曲第1番が含まれます。

本作は1933年の3月6日から7月20日にかけて作曲されました。トランペットの独奏パートは、当時のレニングラード・フィルハーモニー交響楽団の首席トランペット奏者であったアレクサンドル・シュミュトの卓越した技量を念頭に置いて書かれたと伝えられています。初演は同年10月15日、レニングラードにおいて、作曲者自身のピアノ独奏、フリッツ・シュティードリー指揮のレニングラード・フィルハーモニー交響楽団の演奏で行われました。この初演は大成功を収め、ショスタコーヴィチは作曲家としても、そしてソリストとしても高く評価されました。

この作品は、作品番号30番台のショスタコーヴィチ作品の中でも特に人気が高く、現在でもコンサートで頻繁に取り上げられています。

楽曲の特徴

このピアノ協奏曲の最も顕著な特徴の一つは、作品全体にわたって散りばめられた自作や他者の作品からの多様な引用です。自作の『24の前奏曲』との間には、テーマや技法、あるいは作品の性格において明らかな類似性が見られます。その他にも、劇付随音楽『ハムレット』（作品32）、サーカス・ショーのための音楽『条件付きの死者』（作品31）、そしてトランペットが演奏する終楽章のソロパートには、ドレッセルのオペラ『あわれなコロンブス』への序曲（作品23の1）など、当時の未出版作品からの引用も含まれていると言われています。

他の作曲家の作品からも、ほとんどパロディと言えるような形で多くのモティーフが登場します。例えば、第1楽章の第1主題にはベートーヴェンのピアノ・ソナタ第23番『熱情』の引用が、終楽章のギャロップを特徴づける部分には、ベートーヴェンのロンド『失われた小銭への怒り』のモティーフが見出されます。これらの引用は、ピアノのカデンツァで特に明確に姿を現します。さらに、ユーモラスな性格を持つハイドンのピアノ・ソナタ ニ長調（Hob.XVI-37）からの引用句や、オーストリアの広く知られた民謡『愛しいアウグスティン』、あるいはイギリスの民謡『泣きじゃくるジェニー』といった歌からの引用も織り交ぜられています。

作品全体にはシニカルな雰囲気が漂っており、「間違った調性」への意図的な横滑り、特殊奏法の多用、楽器間の不均衡な響きを生み出す独特な楽器法、ロシア音楽に伝統的な歌謡性の否定、そしてリズミカルな要素への極端な依存といった手法によって、一種の皮肉や風刺を感じさせる印象を与えています。ちなみに、ハ短調という調性はラフマニノフの有名なピアノ協奏曲第2番と同じですが、作品の性格は大きく異なります。

作品のタイトルに「トランペット」が含まれているものの、この楽器は必ずしもピアノと対等な独奏楽器として扱われているわけではありません。しばしば皮肉めいた合いの手を入れたり、ピアノの華麗な走句にユーモアやウィットを添えたりする役割を担っています。このため、古典的な協奏交響曲や二重協奏曲というよりは、伝統的なピアノ協奏曲の形式に近いと言えます。

構成と楽器編成

この協奏曲は、解釈によって4つの楽章、または全体をアタッカで連結された単一楽章と見なすことも可能です。演奏時間は約20分です。

伝統的な楽章構成は以下の通りです。

第1楽章：アレグロ・モデラート
第2楽章：レント
第3楽章：モデラート
第4楽章：アレグロ・コン・ブリオ

第3楽章「モデラート」は非常に短いため、独立した楽章というよりも終楽章への導入部として捉えられることもあります。しかし、両楽章は雰囲気が大きく異なるため、通常は区別して扱われます。録音によっては、トラック数が3つとなっている場合もあり、その際は「Moderato - Allegro con Brio」のように表記されることがあります。

楽器編成は以下の通りです。

独奏楽器
ピアノ
合奏楽器
独奏トランペット（変ロ）
* 弦楽五部（ヴァイオリン1、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス）

現在の受容

その独特な魅力と演奏効果の高さから、本作はショスタコーヴィチの数ある作品の中でも特に人気があり、世界中のコンサートホールで演奏され続けています。彼の初期作品における実験精神と、聴衆を惹きつけるエンターテインメント性が融合した好例として、多くの音楽愛好家に親しまれています。

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