ピアノ協奏曲第2番 (ウェーバー)

ピアノ協奏曲第2番 変ホ長調 作品32

カール・マリア・フォン・ウェーバー（Carl Maria von Weber, 1786-1826）が作曲した《ピアノ協奏曲第2番 変ホ長調 作品32》は、彼の創作活動において重要な位置を占める作品の一つです。

作曲背景と経緯

この協奏曲は、1811年から1812年にかけて作曲されました。興味深いのは、全楽章が連続して書かれたのではなく、まず第3楽章が1811年11月7日にミュンヘンで完成し、その後、第1楽章が翌1812年10月19日に、そして最後の第2楽章が同年12月12日にゴータでそれぞれ完成した点です。作曲期間が比較的長く開いた背景には、当時ウェーバーが安定した職を求めて各地を旅していたという事情があります。このような作曲順序は異例であり、ウェーバーの旅路と創作活動が密接に関連していたことを示唆しています。

初演

作品は完成から間もない1812年12月17日に初演されました。

作品の特徴

この協奏曲は、特に全体の調性や音楽的な雰囲気において、同時期に書かれたルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの《ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 作品73《皇帝》》からの影響が指摘されることがあります。しかし、ウェーバー独自の個性、特にオペラ的な華やかさや管弦楽の色彩感も随所に表れています。

形式に関しては、第1楽章は古典的な協奏ソナタ形式に基づいて構成されています。また、第1楽章と第3楽章に含まれるカデンツァは、作曲家によってあらかじめ楽譜の中に書き込まれており、演奏者が自由に即興する部分としては設けられていません。楽譜上にも「カデンツァ」という特別な指示が見られない点が特徴です。さらに、叙情的な第2楽章の終わりから、華やかな終楽章へと切れ目なく移行し、連続して演奏されるように指示されています。

編成

この協奏曲は、以下の編成で演奏されます。

独奏ピアノ
フルート2
クラリネット2
ファゴット2
ホルン2
トランペット2
ティンパニ
弦五部（ヴァイオリン2部、ヴィオラ、チェロ、コントラバス）

構成

作品は3つの楽章から構成されており、全体の演奏時間はおよそ24分です。

1. 第1楽章：アレグロ・マエストーソ（Allegro maestoso）
変ホ長調、4分の4拍子。荘厳で堂々とした雰囲気を持つ楽章です。ソナタ形式によって書かれており、オーケストラの力強い開始に続いて独奏ピアノが登場し、華麗なパッセージと歌謡的な旋律を披露します。

2. 第2楽章：アダージョ（Adagio）
ロ長調、4分の3拍子。劇的な第1楽章とは対照的に、静かで内省的な雰囲気のアダージョ楽章です。三部形式で構成されており、ピアノの美しい旋律がオーケストラと対話するように進みます。この楽章は続けて第3楽章へと繋がります。

3. 第3楽章：ロンド：プレスト（Rondo: Presto）
* 変ホ長調、8分の6拍子。急速で躍動的なロンド形式の終楽章です。軽快な主題が繰り返し現れ、技巧的なピアノのパッセージが曲を盛り上げます。ウェーバーらしい華やかなフィナーレを飾る楽章です。

この協奏曲は、ウェーバーのオペラ作曲家としての才能が、器楽作品にも色濃く反映されていることを示す一例であり、特に独奏ピアノの書法には、彼の卓越したピアニストとしての技術と、劇的な表現への志向が表れています。

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