ピアノ協奏曲第3番 (ベートーヴェン)

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 作品37

ベートーヴェンが作曲したピアノ協奏曲第3番は、彼のピアノ協奏曲の中で唯一の短調作品であり、その劇的な表現と革新的な構成が特徴です。この曲は、ベートーヴェンが音楽家として円熟期を迎える中で生み出された傑作の一つとされています。

概要

この協奏曲の作曲は、1796年に開始されました。当初は1800年4月2日の初演を目指していましたが、この時点では第1楽章のみが完成していました。初演はそれから3年後の1803年4月5日に行われましたが、この時も独奏ピアノパートは未完成で、ベートーヴェン自身が即興で演奏するという異例の形となりました。その後、1804年7月に弟子のフェルディナント・リースによって、初めて完成した楽譜に基づいて演奏されました。

この曲が作曲された時期は、ベートーヴェンが聴覚の異常に苦しみ、絶望的な状況にあった時期と重なります。1802年には「ハイリゲンシュタットの遺書」をしたためていますが、初演で自らピアノを演奏したことから、当時、聴覚の病状は深刻ではなかったと推測されています。

楽器編成

この曲は、独奏ピアノに加え、以下の楽器で演奏されます。

フルート 2
オーボエ 2
クラリネット 2
ファゴット 2
ホルン 2
トランペット 2
ティンパニ
弦五部

曲の構成

この協奏曲は、古典的な協奏曲の形式に沿った3楽章構成となっています。

第1楽章: Allegro con brio ハ短調 2/2拍子
協奏的ソナタ形式で構成され、弦楽器が静かに主題を提示します。この主題は、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」の主題とも関連性が見られます。
展開部は、提示された主題を印象付けるように展開されます。カデンツァは、ベートーヴェン自身によって書かれたものが知られています。その他に、クララ・シューマンやイグナーツ・モシェレスによるカデンツァも存在します。
カデンツァの後もピアノ演奏が続き、コーダではティンパニが主題後半部を演奏するという斬新な手法が用いられています。この手法は、後に交響曲第9番でも大胆に使われています。
第2楽章: Largo ホ長調 3/8拍子
複合三部形式で構成され、独奏ピアノが美しい旋律を奏でます。中間部はロ長調に転調します。
第3楽章: Molto allegro ハ短調～ハ長調 2/4拍子
ロンド形式で構成され、トルコ風のリズムを持つロンド主題が提示されます。その後、管楽器によるファンファーレに導かれて副主題が現れます。
中間部では、変イ長調の穏やかな主題が奏でられ、ロンド主題の再現後、ハ長調に転じます。副主題が再現された後、ロンド主題が回想され、オーケストラのトゥッティによる盛り上がりを経て、独奏ピアノによる華麗なパッセージが演奏されます。
コーダは6/8拍子に転じ、急速なテンポで演奏され、管弦楽の強奏によってハ長調で喜ばしく終わります。このコーダは高度な演奏技術を必要とします。

編曲

シャルル＝ヴァランタン・アルカンによって、第1楽章がピアノ独奏用に編曲されており、その中にはベートーヴェンの交響曲第5番の第4楽章を引用した長大なカデンツァが含まれています。このカデンツァは、第3番の第1楽章の主題と第5番の第4楽章の主題の類似性に着目したものです。

アルカンの編曲版は、マルカンドレ・アムランなどによって演奏されています。楽譜はIMSLPから入手可能です。

脚注

注釈

出典

外部リンク

Piano Concerto No. 3の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)
Musopen.com Piano Concerto No. 3 sheet music

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