ピアノ協奏曲第4番 (カバレフスキー)

ピアノ協奏曲第4番『プラハ』作品99

ソビエトの作曲家ドミトリー・カバレフスキーによって1979年に作曲されたピアノ協奏曲です。作品番号は99が付されています。この楽曲は、1980年に開催された第10回クイビシェフ（現サマーラ）国際ピアノコンクールのために委嘱され、書かれました。

約12分という比較的短い演奏時間でありながら、カバレフスキーが青年向けに作曲した他の協奏曲シリーズと共通する明快な特徴を備えています。特に、作曲者がプラハ滞在中に耳にしたとされる3つの民謡旋律が主要な素材として用いられていることから、「プラハ協奏曲」という愛称でも呼ばれることがあります。

作曲者自身は、この協奏曲の第1楽章と第3楽章に見られる躍動的な音楽を「活動」、そして中間楽章の穏やかな雰囲気を「反映」と表現しました。全体的に、無駄を削ぎ落とした簡潔な構造を持ち、時には皮肉めいたユーモアや乾いた響きを含みつつも、独奏ピアノには確かな演奏技術が求められるように巧みに書かれています。これは、カバレフスキーが生涯にわたり若い世代の音楽家のために力を注ぎ、多くのピアノ作品を生み出したその創作姿勢が色濃く反映されていると言えるでしょう。

初演と録音

本作の初演は、作曲された年の10月9日にモスクワで行われました。独奏ピアノは、当時モスクワ音楽院の学生であったユーリー・ポポフが担当しました。その後、1981年には、メロディア・レーベルよりポポフの独奏、そして作曲者カバレフスキー自身が指揮するモスクワ・フィルハーモニー管弦楽団による顔ぶれで商業録音が行われています。

楽器編成

独奏ピアノ
スネアドラム
弦楽合奏

編成は最小限であり、特に打楽器としてはスネアドラムのみが指定されているのが特徴的です。

楽曲構成

本作品は伝統的な3楽章構成をとっています。

第1楽章 アレグロ・モルト・エ・エネルジーコ

「非常に速く、力強く、精力的に」という速度・発想記号が示す通り、活気に満ちた楽章です。弦楽合奏による短い導入の後、すぐに独奏ピアノが登場し、キビキビとしたテンポで進行していきます。第2主題は対照的にユーモラスな性格を帯びています。楽章の終盤では、一瞬落ち着いた雰囲気になるものの、すぐに第1主題が再現され、勢いを保ったまま簡潔に締めくくられます。

第2楽章 モルト・ソステヌート - インプロヴィサート -

「非常に持続して - 即興的に -」と指定された中間楽章です。独奏ピアノによる抒情的なモノローグで静かに開始します。「インプロヴィサート（即興的に）」という指示は、ピアニストに自由な表現力を求めていることを示唆しています。楽章の中間部分で一度大きな高揚を見せますが、再び冒頭のような静けさに戻ります。深い余韻を残しながら穏やかに終結します。

第3楽章 ヴィーヴォ - ピウ・モッソ. コン・ブリオ

「活発に - より速く。輝きをもって」という指示を持つ終楽章です。スネアドラムの力強い連打によって開始される、トッカータ風の性格を持つ楽章です。随所にジャズ音楽からの影響も感じられます。ピアノの扱いは第1楽章とは異なり、音階的な速いパッセージよりも、打楽器のように和音を鋭く鳴らす場面が多く見られます。最後は再びスネアドラムの響きと、リズミカルな和音の強打によって、全曲の終わりが力強く告げられます。

カバレフスキーのピアノ協奏曲第4番は、その演奏時間の短さにもかかわらず、若いエネルギーと独自のユーモア、そして明快な形式感を兼ね備えた、作曲家の後期のスタイルを代表する作品の一つと言えるでしょう。

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