ピアノ四重奏曲 変ロ長調 (サン＝サーンス)
カミーユ・サン＝サーンスによるピアノ四重奏曲 変ロ長調 作品41は、1875年2月に完成された室内楽曲です。サン＝サーンスはこれ以前にもピアノ四重奏曲 ホ長調を作曲していましたが、そちらは長らく未出版でした。本作が書かれた1875年は、作曲家にとって非常に重要な年であり、マリー＝ロール・トリュフォとの結婚や長男アンドレの誕生といった個人的な出来事に加え、オラトリオ『ノアの洪水』やピアノ協奏曲第4番の完成、『死の舞踏』の初演など、創作面でも多作な時期でした。
この作品はジュール・フーコーに献呈され、初演は作曲から間もない1875年3月6日、パリのサル・プレイエルで行われました。演奏者は作曲者自身がピアノを担当し、ヴァイオリンにはパブロ・デ・サラサーテ、ヴィオラにはオペラ座のアルフレ・トゥルバン、チェロにはレオン・ジャカールという当時の名手たちが揃いました。その後、オーギュスト・オルンによるピアノ連弾版が1877年に、ジュール・グリセによる2台ピアノ版が1910年に作成されています。
音楽学者ジェレミー・ニコラスは、このピアノ四重奏曲作品41を、サン＝サーンスの七重奏曲やヴァイオリンソナタ第1番と並ぶ傑作でありながら、その評価が一般に浸透していない点に言及しています。楽曲全体は循環形式で構成されており、後の楽章で先行楽章の主題が再び登場します。現在、この作品はピアノ四重奏の標準的なレパートリーとして広く認識されています。
本作は典型的な4楽章構成を取り、各楽章が緊密に関連しています。
Allegretto 4/4拍子 変ロ長調。ソナタ形式で書かれています。冒頭、ピアノの和音に応答するように弦楽器が旋律を奏で、その後役割を交代して繰り返されます。経過的な部分を経て、ピアノの細かい伴奏の上でヴァイオリンが第2主題を提示し、これがチェロに歌い継がれます。提示部が終わると展開部に入り、冒頭の主題や第2主題が扱われます。再現部では、冒頭主題の一部がピアノに残され、そのまま移行します。第2主題は全楽器で再現され、最後は再び冒頭主題の断片を残して静かに楽章を閉じます。
Andante maestoso ma con moto 4/4拍子 ト短調。自由な形式で構成されています。楽章はピアノが動きのある特徴的な音型を奏でることから始まり、その勢いは「まるで完全に礼儀を失したよう」とも評されます。ピアノがその音型を続ける中、弦楽器がユニゾンでコラール風の主題を提示します。これらのやり取りは楽器の役割を交代して繰り返されます。続いて、急速な上昇音階を合図に、冒頭のピアノ音型に由来する主題によるフガートが開始されます。フガートは展開し、高揚した後、コラール風の主題が再び弦楽器で斉奏されます。その後、音量を落として2つの主題が扱われ、フガートの音型が再び現れ、やがて冒頭の音型とコラール風主題が堂々と再現されて楽章を終えます。
Poco allegro più tosto moderato 6/8拍子 ニ短調。ロンド形式のスケルツォであり、創意工夫に満ちた楽章です。ヴィオラとピアノによる、メンデルスゾーンを思わせる楽想で開始します。同じ主題が奏される中で速度が速まり、ピアノの華麗なアルペッジョが加わります。進行の途中でヴァイオリンによるカデンツァが挿入され、その後さらに速度を上げて再び冒頭主題が奏されます。やがて拍子が2/4拍子に変わり、新しい楽想が登場します。今度はピアノによるカデンツァが置かれ、その終わりにはモルト・アレグロへと加速します。冒頭主題が急速に奏され、プレストを経てプレスティッシモに達し、弱音のまま最後の音符まで駆け抜けるように終わります。
Allegro 2/2拍子 ニ短調。幻想曲のような性格を持つ終楽章で、先行楽章の主題が数多く再登場し、循環形式であることが明確に示されます。精力的な主題で開始し、その音型を用いて発展します。やがてヴァイオリンに経過的な主題が現れ、続いてヴァイオリンから始まり、ヴィオラ、チェロへと順に歌い継がれる落ち着いた雰囲気の抒情的な旋律が登場します。この旋律は調性が曖昧な特徴を持ちます。次第に勢いを回復して冒頭の精力的な主題が再現され、さらに展開されますが、再び音量を抑えて抒情的な旋律が再登場します。今回はこの旋律が第2楽章のコラール風主題に繋がり、第1楽章の冒頭主題の断片による応答が加わります。対位法的な手法で処理され、再び精力的な主題の楽想に戻り、一層華やかに奏されます。さらに、先ほどと同様にコラール風主題が静かに現れ、第3楽章に登場した新しい楽想のようなフレーズも聞かれながら、徐々に音量が減衰します。ここで拍子が4/4拍子、調が変ロ長調に変わり、第1楽章の冒頭主題がピアノのアルペッジョを伴って回想され、それに第1楽章の第2主題が続きます。コラール風主題と第1楽章第2主題を用いたフガートとなり、最後は元の変ロ長調で精力的な主題とコラール風主題によるコーダを経て、華々しく全曲の幕を閉じます。
この作品はジュール・フーコーに献呈され、初演は作曲から間もない1875年3月6日、パリのサル・プレイエルで行われました。演奏者は作曲者自身がピアノを担当し、ヴァイオリンにはパブロ・デ・サラサーテ、ヴィオラにはオペラ座のアルフレ・トゥルバン、チェロにはレオン・ジャカールという当時の名手たちが揃いました。その後、オーギュスト・オルンによるピアノ連弾版が1877年に、ジュール・グリセによる2台ピアノ版が1910年に作成されています。
音楽学者ジェレミー・ニコラスは、このピアノ四重奏曲作品41を、サン＝サーンスの七重奏曲やヴァイオリンソナタ第1番と並ぶ傑作でありながら、その評価が一般に浸透していない点に言及しています。楽曲全体は循環形式で構成されており、後の楽章で先行楽章の主題が再び登場します。現在、この作品はピアノ四重奏の標準的なレパートリーとして広く認識されています。
楽曲構成
本作は典型的な4楽章構成を取り、各楽章が緊密に関連しています。
第1楽章
Allegretto 4/4拍子 変ロ長調。ソナタ形式で書かれています。冒頭、ピアノの和音に応答するように弦楽器が旋律を奏で、その後役割を交代して繰り返されます。経過的な部分を経て、ピアノの細かい伴奏の上でヴァイオリンが第2主題を提示し、これがチェロに歌い継がれます。提示部が終わると展開部に入り、冒頭の主題や第2主題が扱われます。再現部では、冒頭主題の一部がピアノに残され、そのまま移行します。第2主題は全楽器で再現され、最後は再び冒頭主題の断片を残して静かに楽章を閉じます。
第2楽章
Andante maestoso ma con moto 4/4拍子 ト短調。自由な形式で構成されています。楽章はピアノが動きのある特徴的な音型を奏でることから始まり、その勢いは「まるで完全に礼儀を失したよう」とも評されます。ピアノがその音型を続ける中、弦楽器がユニゾンでコラール風の主題を提示します。これらのやり取りは楽器の役割を交代して繰り返されます。続いて、急速な上昇音階を合図に、冒頭のピアノ音型に由来する主題によるフガートが開始されます。フガートは展開し、高揚した後、コラール風の主題が再び弦楽器で斉奏されます。その後、音量を落として2つの主題が扱われ、フガートの音型が再び現れ、やがて冒頭の音型とコラール風主題が堂々と再現されて楽章を終えます。
第3楽章
Poco allegro più tosto moderato 6/8拍子 ニ短調。ロンド形式のスケルツォであり、創意工夫に満ちた楽章です。ヴィオラとピアノによる、メンデルスゾーンを思わせる楽想で開始します。同じ主題が奏される中で速度が速まり、ピアノの華麗なアルペッジョが加わります。進行の途中でヴァイオリンによるカデンツァが挿入され、その後さらに速度を上げて再び冒頭主題が奏されます。やがて拍子が2/4拍子に変わり、新しい楽想が登場します。今度はピアノによるカデンツァが置かれ、その終わりにはモルト・アレグロへと加速します。冒頭主題が急速に奏され、プレストを経てプレスティッシモに達し、弱音のまま最後の音符まで駆け抜けるように終わります。
第4楽章
Allegro 2/2拍子 ニ短調。幻想曲のような性格を持つ終楽章で、先行楽章の主題が数多く再登場し、循環形式であることが明確に示されます。精力的な主題で開始し、その音型を用いて発展します。やがてヴァイオリンに経過的な主題が現れ、続いてヴァイオリンから始まり、ヴィオラ、チェロへと順に歌い継がれる落ち着いた雰囲気の抒情的な旋律が登場します。この旋律は調性が曖昧な特徴を持ちます。次第に勢いを回復して冒頭の精力的な主題が再現され、さらに展開されますが、再び音量を抑えて抒情的な旋律が再登場します。今回はこの旋律が第2楽章のコラール風主題に繋がり、第1楽章の冒頭主題の断片による応答が加わります。対位法的な手法で処理され、再び精力的な主題の楽想に戻り、一層華やかに奏されます。さらに、先ほどと同様にコラール風主題が静かに現れ、第3楽章に登場した新しい楽想のようなフレーズも聞かれながら、徐々に音量が減衰します。ここで拍子が4/4拍子、調が変ロ長調に変わり、第1楽章の冒頭主題がピアノのアルペッジョを伴って回想され、それに第1楽章の第2主題が続きます。コラール風主題と第1楽章第2主題を用いたフガートとなり、最後は元の変ロ長調で精力的な主題とコラール風主題によるコーダを経て、華々しく全曲の幕を閉じます。
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。