ピアノ独奏による協奏曲

ピアノ独奏による協奏曲 (Concerto pour piano seul)

シャルル＝ヴァランタン・アルカンによって作曲された《ピアノ独奏による協奏曲》は、彼の連作《短調による12の練習曲》作品39のうち、第8番から第10番を連続して演奏することで形成される独創的な作品です。1857年に出版されました。

作品の概要と特質

本作の最もユニークな点は、独奏ピアノのために書かれているにもかかわらず、あたかも管弦楽と独奏楽器による協奏曲のように構成されていることです。楽譜には「トゥッティ」や「ソロ」といった指示が記されており、演奏者は一人でオーケストラの響きとソリストの役割を表現するよう求められます。作品は極めて大規模で、全三楽章を通して121ページ、演奏時間は約50分に及びます。特に第一楽章は単独で30分近くかかるため、アルカン自身は演奏会での実用性を考慮し、第一楽章に大幅な省略を認める指示を残しています。この長大さと並外れた技術的要求のため、全曲の初演は作曲から80年以上を経た1939年にエゴン・ペトリによって実現しました。アドリアン・コーレオニスをはじめ、多くの評者からピアノ音楽史上最も難しく、演奏者に過酷な負担を強いる作品の一つと見なされています。調性も嬰ト短調から嬰ヘ長調へと移り変わる発展的な性格を持ち、練習曲集全体の調性配置と関連しています。カール・クリントヴォルトやマーク・スターによる管弦楽編曲版も存在します。アルカンの他の「協奏曲」は比較的小規模な作品であるため、本作が彼にとって事実上唯一の大規模協奏曲と言えるでしょう。

楽曲構成

全三楽章は全て4分の3拍子で書かれています。

第1楽章 アレグロ・アッサイ

嬰ト短調。約30分を要するこの楽章は、強靭な体力とあらゆる種類の超絶技巧を要求する難曲です。協奏的ソナタ形式で、三つの主要主題を持ちます。「トランペットのように」「チェロのように」といったオーケストラ楽器の模倣指示が頻繁に現れます。展開部では主題動機が展開され、全音音階や複調的な響きも顔を出します。独立したカデンツァはなく、コーダ全体がカデンツァのような自由な性格を持ちつつ、最終的に主調の同主長調である変イ長調で力強く終結します。

第2楽章 アダージョ

嬰ハ短調。自由な形式で、ノクターン風の主題や葬送行進曲のような動機が登場します。大胆な転調や和声が特徴的で、悲劇的な雰囲気の中で幕を閉じます。

第3楽章 アレグレット・アラ・バルバレスカ

「蛮族風のアレグレット」と題され、第一楽章に劣らない難技巧が特徴です。ロンド形式またはロンド・ソナタ形式と解されます。ジプシー音階やドリア旋法が用いられた主題や、「レベックのように」といった指示により、「野蛮な」性格が強調されています。中間部では第一楽章の主題が引用され、作品の統一性が図られています。活気に満ちたコーダを経て、歓喜のうちに全曲が閉じられます。幅広い跳躍や3対4のポリリズムが頻繁に用いられることも、この楽章を含む作品全体の特徴です。

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