ピエール・アンリ・カミ

ピエール＝アンリ・カミ

ピエール＝アンリ・カミ（Pierre-Henri Cami、1884年6月20日 - 1958年11月3日）は、フランスの著名なユーモア作家です。アンリ・カミという筆名でも活動しました。彼はフランス南西部の都市ポーでこの世に生を受けました。

生涯と初期の夢

本名をピエール・ルイ・アドリアン・シャルル・アンリ・カミといった彼は、1884年6月20日にポーで誕生しました。父シャルルは当時28歳のセールスマンで、カミの家庭は経済的に安定しており、ピエール・アンリと三人の妹たちは恵まれた環境で育ちました。

少年時代、彼はポーのリセで学びましたが、特に際立った成績を収めることはありませんでした。15歳になる頃、カミ（Kami）名義で詩作を始めています。当初、彼は闘牛士になることを熱望しましたが、視力の問題から父の反対にあい、その夢を諦めざるを得ませんでした。その後、詩人を目指すようになり、著名な詩人フレデリック・ミストラルやフランソワ・コペーに手紙で指導を仰いだ経験もあります。しかし、彼は再び進路を変更し、俳優を志してパリへ移りました。残念ながら、地方訛りが強く、俳優としては成功を収めることができませんでした。伝わる逸話によれば、吃音の役ばかりを演じるうち、本当に吃音が身についてしまったともいわれています。

ユーモア作家としての活動

数々の挫折を経て、カミはユーモア作家としての道を歩み始めます。そのキャリアは、葬儀屋の専門誌『挿絵入り誌・小さな霊柩車（Petit corbillard illustré）』で他の著者の代わりに文章を書くという、異色の形でスタートしました。

特に風刺の才能に恵まれ、中でも演劇界の奇妙な出来事を題材にした作品は、1914年頃から彼に名声をもたらしました。彼は極めて滑稽で誇張されたキャラクターを数多く創造しましたが、中でも名探偵ルーフォック・オルメス（Loufock-Holmès）やセザール・リキキ（César Rikiki）は代表的で、第二次世界大戦期までは高い評価を得ていました。彼の作風は時間とともに変化を見せ、初期の作品には純粋なナンセンスの要素が色濃く表れていますが、後期の作品では社会風刺の側面がより強調されるようになります。

カミの才能は同時代の著名人からも高く評価されました。喜劇王チャールズ・チャップリンは、彼を「世界で最も優れたユーモリスト」と称賛しています。また、詩人ジャック・プレヴェールはカミの熱烈な崇拝者であり、彼の作品のユニークなスタイルを表すために、ローラン・トポールやジャン＝ジャック・ポーヴェール、レーモン・ドゥヴォスといった他のユーモリストたちのスタイルにちなんで、「カミ風（camisard）」という独自の造語を提案したほどです。

作家活動の一環として、カミは有名なグラフ誌『イリュストラシオン』に「カミ週間（la semaine Camique）」という連載を持っていました。

晩年と遺産

ピエール＝アンリ・カミは1958年11月3日、74歳でパリ18区のエテックス街にある自宅で静かに息を引き取りました。その最期はあまり人知れず訪れたといわれています。

フランス国内では今なお多くの読者に愛されるカミの作品は、日本においても翻訳されており、『三銃士の息子』や『機械探偵クリク・ロボット』、『ルーフォック・オルメスの冒険』などが日本語で出版され、その独特のユーモアが紹介されています。彼の生み出したナンセンスと風刺の世界は、時代を超えて多くの人々に笑いと洞察を与え続けています。

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