ピエール・ド・ポリニャック

ピエール・ド・ポリニャック：モナコ公室の血統と激動の生涯

ピエール・ド・ポリニャック（1895年 - 1964年）は、フランス貴族の家柄に生まれ、モナコ公室の一員となった人物です。モナコ公レーニエ3世の父として知られ、その生涯は華麗な社交界と複雑な人間関係に彩られていました。

生い立ちと出自

ピエールは、マクサンス・ド・ポリニャック伯爵とメキシコ人の妻スサナ・デ・ラ・トーレ・イ・ミエルの間に生まれました。父方の祖父は、フランス王妃マリー・アントワネットの寵臣であったポリニャック公爵夫人の子孫にあたります。母方の叔父は、ポルフィリオ・ディアス大統領の娘婿でしたが、同性愛スキャンダルに関与し、政権の評判を落とすという出来事がありました。

シャルロット公女との結婚と離婚

1920年、ピエールはモナコのシャルロット公女と結婚し、モナコ公子となり、ヴァランティノワ公爵の称号を得ました。この結婚は政略結婚の側面があり、ピエール自身の同性愛やシャルロットの不倫によって、夫婦関係は早くから困難を抱えていたとされています。第一次世界大戦後、ピエールは社交界でマルセル・プルーストやジャン・コクトーといった文化人と交流を深めました。プルーストはピエールに特別な感情を抱き、それは作品や手紙にも表れています。

1920年代半ばには夫婦は別居状態となり、1933年に正式に離婚しました。離婚後もピエールはモナコ公室のメンバーであり続け、政府から歳費を受け取りましたが、元義父であるルイ2世公からはモナコ国内での居住を制限されていました。レーニエ3世の治世になると、ピエールはモナコに帰国し、公宮殿に隣接する邸宅を提供されました。晩年、彼は米国出身の富豪女性との再婚を望みましたが、シャルロットとの宗教婚の解消は認められませんでした。

モナコにおける公的役割

ピエールは、モナコに新しい文化や芸術を導入しようと尽力しました。セルゲイ・ディアギレフ率いるバレエ・リュスとのスポンサー契約を機に、モナコ海水浴協会（SBM）がバレエ団をモナコに常駐させることになりました。また、コラムニストのエルザ・マクスウェルに依頼し、モナコのイメージを刷新する戦略を提案させました。マクスウェルは、家族向けのレジャー施設を充実させることで、モナコをより魅力的な観光地として発展させることを提唱し、モナコグランプリの開催を実現させました。

1928年、観光客の増加によって生活が圧迫された市民やSBMの社員が抗議活動を起こした際、ピエールはルイ2世公の命を受け、国民議会の議員らとの折衝にあたりました。1929年には、労働者たちが公宮殿を襲撃する事件が発生し、ピエールは労働者たちを説得し、彼らの要求をルイ2世公に伝えました。この際、宮廷の一部はルイ2世を廃位し、ピエールをモナコ公に擁立しようと画策しましたが、最終的にはルイ2世が軍を動員して事態を鎮圧しました。

1951年から亡くなるまで、ピエールはモナコ文学会議の初代総裁を務め、フランス語文学の作家を対象としたピエール・ド・モナコ公子財団文学賞を創設しました。また、1957年からはユネスコのモナコ政府代表およびモナコオリンピック委員会会長を務めました。

死去と栄誉

1964年、ピエールは癌のためパリで亡くなりました。モナコのサン・シャルル勲章、フランスのレジオンドヌール勲章など、数々の栄誉に浴しました。

子女

シャルロット公女との間には、アントワネット公女とレーニエ3世公という1男1女を儲けました。

ピエール・ド・ポリニャックは、モナコ公室の一員として、また文化人としての足跡を残し、その生涯は今も語り継がれています。

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