ピエール・ポワブル

ピエール・ポワブル（Pierre Poivre）は、1719年8月23日にフランスのリヨンで生まれ、1786年1月6日に同地で亡くなったフランスの宣教師であり、同時に園芸家としても名を馳せました。彼の名前は、フランス語で胡椒を意味する「ポワヴリエ（Poivrier）」の語源としても知られています。

生涯

ポワブルは20代の頃、宣教師としてコーチシナ（現在のベトナム南部）、広州、マカオなど極東地域で活動しました。1745年にはフランス東インド会社のメンバーとなり、東インド諸島への航海の途中で、イギリス船との海戦に巻き込まれてしまいます。この海戦で砲弾の破片が手首に当たり、右腕の一部を失うという重傷を負いました。1760年には、インド洋に浮かぶフランス領の島々、現在のモーリシャスとレユニオンの監督官に任命され、この地で重要な業績を残します。

監督官として着任後、ポワブルはモーリシャスに植物園を設立しました。この植物園は、後のパンプルムース植物園として知られるようになります。当時の香料貿易はオランダが独占しており、クローブ（丁子）やナツメグといった貴重な香料は、オランダによって厳重に管理されていました。ポワブルは、このオランダによる独占を打ち破るために、これらの香料の栽培をモーリシャスとレユニオンに導入することを決意します。

彼は、東インドから秘密裏に種子や苗などを持ち込み、これらの島々での香料栽培を試みました。この行為は、オランダの独占を脅かすものであり、当時としては非常に大胆な行動でした。1769年から1770年にかけては、香料の採集を目的とした探検旅行も実施しました。その後、セーシェルでの香料栽培の責任者も務めるなど、香料貿易の発展に大きく貢献しました。

1772年、ポワブルはフランスに戻り、故郷のリヨンで生涯を閉じました。彼がモーリシャスに設立した植物園は、現在もパンプルムース植物園として残り、多くの観光客が訪れる場所となっています。また、モーリシャスにはポワブルの名を冠した環礁も存在し、彼の功績が今に伝えられています。

著作

ポワブルは、自身の経験や思想をまとめた著作も残しています。主なものとして、以下のようなものがあります。

Voyages d’un philosophe ou observations sur les mœurs et les arts des peuples de l’Afrique, de l’Asie et de l’Amérique（1768） - 「哲学者の旅、またはアフリカ、アジア、アメリカの人々の習慣と芸術に関する観察」。この著作は、ポワブルの旅行記として知られ、当時の各地域の文化や社会の様子が詳しく記述されています。
Oeuvres complettes [sic] de P. Poivre: intendant des isles de France et de Bourbon, correspondant de l'accademie des science, etc: précédées de sa vie et accompagnées de notes (1797) - 「P.ポワブルの全集：フランス島とブルボン島の監督官、科学アカデミーの特派員など、彼の生涯の記述と注釈付き」。この著作は、ポワブルの全集として出版され、彼の生涯や業績に関する詳細な記述が含まれています。

関連事項

ポワブルは、香料貿易の歴史において重要な人物であり、彼の行動は、後の国際貿易にも大きな影響を与えました。また、彼の名前は、英語の早口言葉「ピーター・パイパー」と関連付けられることもあります。

ポワブルは、宣教師として、また園芸家として、そして探検家として、多岐にわたる分野で活躍しました。彼の功績は、現代においても高く評価されており、彼の名前は歴史に刻まれ続けています。

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