ピエール・ワルデック＝ルソー

ピエール・ワルデック＝ルソー：フランス第三共和政を支えた政治家

ピエール・マリー・ルネ・エルネスト・ワルデック＝ルソー（1846年12月2日 – 1904年8月10日）は、フランス第三共和政において重要な役割を果たした政治家であり、弁護士でした。彼は閣僚評議会議長、すなわち首相として1899年から1902年までフランスを率い、激動の時代を乗り切りました。

生涯

弁護士として

1846年、ワルデック＝ルソーはナントで生まれました。幼少期は視力が弱かったため、書物を通じた教育を受けることができず、口頭での教育に頼らざるを得ませんでした。その後、ポワティエとパリで法律を学び、1869年に弁護士資格を取得。共和派として著名な父親の影響もあり、彼は共和派の有力者たちから支持を受けました。ジュール・グレヴィは彼をパリ法曹界で後援し、ジュール・アルマン・デュフォールやジュール・シモンの邸宅にも頻繁に招待されました。しかし、パリでの弁護士活動はなかなか軌道に乗らず、故郷に戻り、1870年にサン＝ナゼールで弁護士としてのキャリアをスタートさせました。

同年9月には、地方行政を担う地方自治委員会の秘書に、23歳という若さで就任。サン＝ナゼールの守備隊を組織し、自ら軍を率いて進軍しましたが、弾薬不足のため戦闘には参加できませんでした。その後、1873年にレンヌに移り、弁護士業を継続しました。

政治家として

1879年、ワルデック＝ルソーは代議院議員に当選。「社会秩序への憎悪を植えこむ教育以外の全ての自由を尊重する」というマニフェストを掲げました。代議院ではレオン・ガンベタの政策を支持し、カトリックの家系でありながら、ジュール・フェリーによる反教権的な教育法案に賛成票を投じました。また、日曜日と祭日の労働を禁じる法律の廃止、神学生への兵役義務、離婚制度の再設立にも賛成しました。1880年には、フランスの司法制度を調査する代議院委員会の報告を提出し、その名声を確立しました。

1881年にはガンベタ内閣の内務大臣に就任し、1883年から1885年まではフェリー内閣でも内務大臣を務めました。フェリー内閣期には、労働組合の承認（結社の自由）を推進し、地方官僚に対する中央政府の優位性を改めて表明しました。1886年からはパリで弁護士業に専念し、1889年には代議院議員への再選を目指さず、弁護士としての活動に集中しました。弁護士としては、パナマ運河事件でフェルディナン・ド・レセップスを弁護し、再び名声を得ました。

1894年に政界に復帰し、ロワール県から元老院議員に選出されました。1895年のフランス大統領選挙では、保守派の支持を得てフェリックス・フォールとアンリ・ブリッソンの対抗馬として立候補しましたが、第2回投票の前に立候補を取り下げ、フォールを支持しました。その後、穏健共和派からガンベタとフェリーの後継者と目されるようになりました。

首相就任

ドレフュス事件が深刻化し、シャルル・デュピュイ内閣が倒れると、エミール・ルーベ大統領から組閣を要請されました。当初は組閣に失敗しましたが、最終的にはアレクサンドル・ミルラン（左派）とガストン・ド・ガリフェ（右派）という両極の政治家を入閣させることで大連立内閣を成立させ、自身は内務大臣を兼任しました。首相としては、ドレフュス事件の収拾を図り、司法の独立を尊重しつつ、ドレフュスの再審軍法会議を見守り、最終的には特赦という形で決着させました。また、ル・クルーゾでのストライキを鎮静化させ、ポール・デルレードの有罪判決を受け、内閣の危機を乗り越えました。同年12月には恩赦法案が可決されました。

その後、ワイン業の振興策としてワイン、サイダー、ビールへのオクトロワ税を廃止し、新結社法によって修道会の認可制を確立しました。1902年の議会選挙で与党が敗北したことを受け、ワルデック＝ルソーは同年6月3日に首相を辞任。1904年8月10日に病のため亡くなりました。

ピエール・ワルデック＝ルソーは、弁護士としての卓越した能力と政治家としての決断力で、フランス第三共和政の重要な局面を支え、数々の功績を残しました。

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