ピクリン酸アンモニウム

ピクリン酸アンモニウム（D爆薬）

ピクリン酸アンモニウム、またの名をD爆薬やExplosive Dと言い、ピクリン酸とアンモニアから成る塩の一種です。この物質はその性質から爆薬として多くの軍事的用途に利用されてきました。ここではピクリン酸アンモニウムについて、その歴史や特性、そして実際の事例を通じて詳しく解説します。

歴史的背景

ピクリン酸アンモニウムは、1906年にメジャー・ダンによって爆薬として開発されました。その後、1911年11月2日、イタリア軍がリビアで行った空爆がこの物質の初めての実戦使用とされています。この空爆はラ・スタンパによって報じられ、ピクリン酸アンモニウムの存在が広く知られるようになりました。さらに、第一次世界大戦においてアメリカ合衆国海軍が大量にこの爆薬を使用し、その威力を実証しました。

特性と安全性

ピクリン酸アンモニウムは、一般的に誘爆のリスクが少ない鈍感な化学物質と見なされています。そのため、初期の頃は安全性が高いと考えられていました。しかし、1911年にアメリカ陸軍はこの物質を廃棄し、より安全性の高い他の爆薬に置き換えました。とはいえ、アメリカ海軍では、徹甲弾の炸薬として引き続き採用され、特に沿岸防備の役割で利用されました。

この爆薬は、強固な装甲に直接命中しても即座に起爆しない性質を持っています。砲弾が装甲を貫通した後に、信管によって起爆される仕組みが取られていました。これにより、戦場での効率的な使用が可能になったのです。

現代の事例

2008年9月1日、カナダのニューファンドランド・ラブラドール州に位置するCape Porcupineで、廃棄されたピクリン酸アンモニウムが風化した岩と間違えられて持ち出されるという事件が発生しました。この事件では、持ち出されたピクリン酸アンモニウムが発見され、爆破処理が施されました。その後、周辺の海岸線の捜索が行われ、大小様々な砲弾が見つかりました。特に、一発の空の砲弾（長さ1m、幅30cm）とともにピクリン酸アンモニウムも検出され、こちらも除去後に爆破処理が行われました。

まとめ

ピクリン酸アンモニウムは、爆薬としての歴史が深く、実際に多くの戦争で使用されてきた実績があります。その鈍感な性質から安全性が評価される一方で、現代でも偶発的な取り扱いや廃棄物としての問題が存在しています。軍事における役割を果たす一方、正しい取り扱いが求められる非常に重要な物質であると言えます。

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出典

• - 外部リンク: 国際化学物質安全性カード ピクリン酸アンモニウム (ICSC:1631) 日本語版（国立医薬品食品衛生研究所による）

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