ピックガード

ピックガード：弦楽器を守る薄い盾

ギターやマンドリンなどの弦楽器において、ボディ表面、弦の下に設置される薄い板状の保護材をピックガードと呼びます。主にピックによる塗装の傷つきを防ぐ目的で使用されますが、楽器の装飾としての役割も担っています。英語ではスクラッチプレート、フラメンコギターではゴルペ板やゴルペアドルとも呼ばれ、指を置く場所として機能する場合はフィンガーレストと呼ばれることもあります。

ピックガードの多様な役割と素材

ピックガードは楽器の保護という実用的な役割に加え、デザイン性を高める要素としても重要です。ボディの色と対照的な色を選ぶことで、楽器全体の印象を大きく変えることができます。例えば、濃い色のボディには白いピックガード、淡色のボディには黒いピックガードがよく用いられます。

素材は多岐に渡り、合成樹脂、アクリル樹脂、ガラス、合板、織物、金属、真珠貝や模造真珠など、実に様々なものが使用されます。高級なギターでは、エキゾチックウッド、毛皮、皮革、宝石、貴金属、真珠やアワビ真珠といった贅沢な素材も用いられることがあります。

合板は一般的な素材であり、その枚数はプライ（ply、層）で表されます。例えば、白3プライとは白・黒・白の3枚の板を重ねたことを意味し、1プライは単板を表します。異なる色の板を重ねることで、見た目にも美しいピックガードが作られます。

また、ピックガードはミュージシャンがサインをする場所としても広く知られています。サインされたピックガードは容易に取り外して別のギターに取り付けることができるため、コレクターアイテムとしても価値があります。

ピックガードのデザインと種類

ピックガードのデザインは多種多様ですが、一般的にはヘッド形状とのバランスが考慮されます。製造元のロゴや商標が刻印されている場合もあります。アコースティックギターやクラシックギターでは、サウンドホールの下に薄いプラスチック板が接着されるのが一般的です。材質によってはボディの共鳴や音色に影響を与えるため、素材の厚みや重さは重要な要素となります。傷んだピックガードは専門家による修理・交換が可能です。

マーティン社の古いギターでは、黒いピックガードが反ったり、縁が剥がれたりする現象が見られますが、これは楽器の個性として受け入れられることが多いようです。クラシックギターは指弾きが主流のため、ピックガードはあまり使用されませんが、激しく演奏するフラメンコギターでは、サウンドホールの上下にゴルペ板と呼ばれるピックガードが取り付けられます。

フェンダー・スタイルと浮揚型ピックガード

フェンダースタイルのピックガードは、ストラトキャスターやテレキャスターなどのソリッドボディギターに使用されます。ボディトップに開けられた穴を覆う大きなピックガードの裏には、ピックアップ、ボリューム、スイッチ、配線といった電気部品が取り付けられています。この設計により、ピックガードを外すことで容易に修理が行えます。

一方、ギブソン・レスポールのようなカーブドトップのギターでは、ピックガードを高さ調整可能な金属ブラケットで持ち上げる浮揚型が用いられることがあります。これは演奏時の快適性を高めるだけでなく、指を休ませる場所としても機能します（フィンガーレスト）。通常、電気部品は取り付けられません。

ピックガードの素材：セルロイドからカスタムデザインまで

カスタムピックガードは様々な素材で作られますが、大量生産品では合成樹脂が広く使用されています。

セルロイドはヴィンテージギターで一般的でしたが、燃えやすく経年収縮によって反るなどの問題があります。ビニールやPVC、アクリル樹脂などは、これらの問題が少ない素材として知られています。

ソリッドボディのエレクトリックギターでは、ユーザーが独自のデザインや素材のピックガードに交換することがよくあります。多くの企業がユニークな交換用ピックガードを提供しています。しかし、サスティーンを重視した設計のギターでは、ピックガードなどの合成樹脂パーツは意図的に省かれる傾向があります。これは、音質に悪影響を与える要素を排除するためです。

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