ピピ (ファミスタ)

ピピ (P.P.)

ピピは、バンダイナムコエンターテインメント（旧ナムコ）が生んだ、人気野球ゲーム「ファミスタ」シリーズに欠かせない架空の選手であり、時にはチームを率いる監督としても登場します。彼は左投げ左打ちのプレイスタイルを持ち、ナムコスターズの絶対的なエースとして長く君臨しています。

概要

ファミスタシリーズの幕開けを飾った1986年発売の初代作品「プロ野球ファミリースタジアム」で、ナムコスターズの主力先発投手として初登場しました。力強い左腕から繰り出される最高150km/hのストレートと、打者の手元で鋭く変化するカーブを駆使する、本格派サウスポーです。

彼のユニークな名前「ピピ」は、開発元であるナムコが1982年にリリースしたレースゲーム「ポールポジション」（Pole Position）の略称「P.P.」に由来します。当時のゲーム機の技術的な制約により、選手名に使用できる文字はひらがなのみ4文字、しかも濁点・半濁点も1文字としてカウントされるという制限がありました。このため、「ぴいぴい」と発音されるべきところが「ひ゜ひ゜」と特殊な形で表記されました。この表記がそのままプレイヤーに親しまれた結果、後にハード性能が向上し文字数の制約が撤廃された後も、名前の由来とは別に「ぴぴ」、あるいは片仮名で「ピピ」という表記が定着しました。

異色の経歴とゲームブックでの活躍

ゲーム本編での活躍に加え、ピピはメディアミックス展開でも重要な役割を担いました。1988年に双葉社から刊行されたファミコン冒険ゲームブックシリーズ「プロ野球ファミリースタジアム ナムコスターズの挑戦」では、選手としてだけでなく、チームを率いる監督としても登場しています。この物語では、親会社（作中では「カモン食品」）の倒産という危機に直面した弱小球団ナムコスターズを救うため、選手兼任監督として新たなスポンサー探しに奔走します。有力実業家・奈夢古（なむこ）氏から、メジャーリーガーズとのオープン戦に勝利することを球団存続の条件として引き出し、無謀とも思える挑戦に挑むストーリーが好評を博し、シリーズは全5巻にわたる人気作となりました。

特にシリーズ第3巻「WE ARE THE CHAMPION!」では、ピピの意外な一面が描かれています。そこでは「ノックをしていたらうっかりホームランを打ってしまうほどの優れた打撃センスを持つ」「半年に一度、代打として登場する際は国民の半分が熱狂する」といった、投手としては異例の高い打撃能力を持つ設定が追加されました。ウルトラオールドスターズとの試合展開によっては、彼自身が代打として起用され、劇的な逆転サヨナラホームランを放つ場面も描かれています。

ゲーム本編への逆輸入と復帰

ゲームブックで追加された設定は、後にゲーム本編にも逆輸入されることになります。選手としては「ファミスタ'88」を最後に一時的に表舞台から姿を消していましたが、「ファミスタ'93」ではゲームブックの設定を受け継ぎ、監督として登場しました。

その後、ニンテンドーゲームキューブで発売された「ファミリースタジアム2003」で、再び投手としてゲームに復帰。この時はワンポイントリリーフとしての登場でしたが、以降の携帯アプリ版などの作品では、かつてのようにチームのエースピッチャーの座に返り咲いています。

プレイステーション2用ソフト「プロ野球 熱スタ2007」では、名前の由来である「ポールポジション」のゲーム画面を模したユニークな覆面を着用して登場するという、さらに特殊な設定が加わりました。この作品内では、発売日である2007年4月5日時点で30歳という具体的な年齢設定もなされています。

決め球と背番号

特定の作品では、ピピの投球に「ターボ」と呼ばれる決め球が追加されました。この魔球を投げると、ボールが一気に加速し、最高球速は驚異の190km/h台に達します。

彼の背番号は、登場作品や役割によって変化しています。

ゲーム本編
ファミスタ'93：93
ファミスタ'94：94
プロ野球 熱スタ2007（投手復帰後）：18

ゲームブック
選手兼任監督時代：18
* 監督専業以降（第2巻〜）：99

ファミコン版およびPCエンジン版における過去の成績データも残されており、彼の長きにわたる活躍の軌跡を示しています。


※上記の成績はファミコン版・PCエンジン版のものであり、作品によって異なる場合があります。「右・左」は変化球の方向（左投手の場合、右がシュート、左がカーブ）、縦はフォークボールを示します。

ピピは、ファミスタシリーズの長い歴史の中で、単なる一選手に留まらず、その名の由来、ゲームブックでの物語、そして波乱に満ちた経歴を通じて、ファンに強い印象を残し続ける象徴的な存在と言えるでしょう。

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