ピュライオス

ピュライオス

ピュライオス（古希: Πύλαιος, Pylaios）は、古代ギリシアの神話や歴史に関する記述に登場する人物です。彼は主に、テッサリアー地方の都市ラーリッサから来たペラスゴイ人の指導者として知られ、伝説的なトロイア戦争においては、トロイア側を支援するために参戦しました。

出自

ピュライオスの出自については、いくつかの異なる伝承が伝えられています。一つの説では、彼はテッサリアー地方にあるラーリッサのペラスゴイ人の王テウタモスの孫にあたるとされます。この伝承によれば、彼の父はレートス、兄弟にはヒッポトオスがいました。彼らは共にトロイア戦争で戦ったと記録されています。しかし、別の伝承では、ピュライオスは直接ペラスゴスの子であると述べられる場合もあります。

トロイア戦争への参加と最期に関する伝承

ホメロスの叙事詩『イリアス』では、ピュライオスと彼の兄弟とされるヒッポトオスは、ラーリッサを率いてトロイア救援のために戦ったペラスゴイ人の武将として挙げられています。ホメロスは、ヒッポトオスがギリシア側の武将である大アイアースに討たれた際に、彼の故郷ラーリッサがトロイアから遠く離れた地であったことを示唆する記述を残しています。

しかし、他の古代の記録者による記述では、ラーリッサから来た武将として名前が挙げられる人物が異なったり、ピュライオス自身の最期について言及されたりしています。例えば、アポロドーロスは、ラーリッサの武将としてはヒッポトオスの名前のみを挙げています。また、プリュギアのダレースによる記録では、ヒッポトオスとともにクペサスの名が挙げられています。一方、クレーテーのディクテュスが記したとされるトロイア戦争の物語では、パトロクロスの葬儀後に行われた戦闘において、ヒッポトオスがヒュタルコスの息子アシオスと共に討ち取られたとされていますが、ディクテュスの記述では、彼らを討ち取った具体的なギリシア側の武将の名前は触れられていません。

故郷「ラーリッサ」の位置に関する議論

地理学者であるストラボーンは、ピュライオスとヒッポトオスが率いたとされるペラスゴイ人の都市ラーリッサが具体的にどこにあったのかについて、彼の著作の中で深く考察しています。彼は「ラーリッサ」という地名が古代世界には非常に多く存在することを指摘しつつ、ホメロスがヒッポトオスの故郷をトロイアから遠い地と歌っている点や、ペラスゴイ人の歴史的な移住を考慮に入れた上で、トロイアと同じく小アジア（アナトリア）の地にあった可能性が高いと論じました。ストラボーンは、特にアイオリス地方の主要都市キュメーの近郊にあったラーリッサを、ホメロスの記述と整合性が高い最も有力な候補地として挙げています。また、彼はレスボス島に伝わる伝承にも触れており、そこではペラスゴイ人の統治者としてピュライオスの名が挙げられ、彼にちなんで名付けられたピュライオンという山が存在したことも記録されています。さらに、小アジアに面したキオス島の都市が、テッサリアー地方から来たペラスゴイ人によって建設されたとする同地の伝承についても言及しており、ペラスゴイ人の活動範囲の広さと、彼らに関連する地名の多さを示唆しています。

このように、ピュライオスに関する記述は、彼の出自、トロイア戦争での役割、そして故郷の地理的な位置に至るまで、複数の古代文献によって異なる側面から語られており、その人物像はこれらの伝承を総合することで見えてきます。

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