ヒッポトオス

ギリシア神話には、ヒッポトオス（古希: Ἱππόθοος, Hippothoos）という名の人物が複数存在します。特に以下の七人がよく知られています。

アイギュプトスの子
アロペーの子
アレオスの子
ヒッポコオーンの子
レートスの子
プリアモスの子
* ケルキュオーンの子

アイギュプトスの子ヒッポトオス

エジプトの王アイギュプトスは50人の息子を持ちましたが、ヒッポトオスはそのうちの一人です。彼の母はアラビア出身の女性と伝えられています。彼はイストロス、カルコードーン、アゲーノール、カイトス、ディオコリュステース、アルケース、アルクメーノール、エウケーノール、ヒッポリュトスといった兄弟たちがいました。ダナオスの娘たちとの結婚が定められ、ヒッポトオスはゴルゲーと結ばれましたが、他の多くの兄弟たちと同様、結婚相手である彼女に殺害されたと言われています。

アロペーの子ヒッポトオス

エレウシースの王ケルキュオーンの娘アロペーと海神ポセイドーンの間に生まれた息子、ヒッポトオーンの別名としても「ヒッポトオス」という名前が使われることがあります。

アレオスの子ヒッポトオス

ヒュギーヌスの伝えるところによれば、アレオスの子ヒッポトオスはアウトリュコスの娘ネアイラの子です。一方、アポロドーロスでは、母ネアイラはペレウスの娘で、アルカディアー地方のテゲアーを治めたアレオス王の妻とされています。彼はリュクールゴス、ケーペウス、アウゲーと兄弟にあたります。ヒッポトオスと兄弟のケーペウスは、ヘーラクレースと彼の子であるテーレポスによって殺害されたため、悲嘆に暮れた母ネアイラは自ら命を絶ったと語られています。

ヒッポコオーンの子ヒッポトオス

スパルタの王ヒッポコオーンには多くの息子がいましたが、ヒッポトオスはその一人です。彼はドリュクレウス、スカイオス、エナロポロス、エウテイケース、プーコロス、リュカイトス、テブロス、エウリュトス、ヒッポコリュステース、アルキヌース、アルコーンといった兄弟がいました。父ヒッポコオーンとその息子たちは、正当な王であるテュンダレオースとイーカリオスを追放してスパルタの王権を奪いましたが、後にヘーラクレースとの戦いに敗れて討たれました。

レートスの子ヒッポトオス

テッサリアー地方の都市ラーリッサのペラスゴイ人の王テウタモスの子レートスの子とされるヒッポトオスは、ピュライオスと兄弟です。アポロドーロスによれば、彼はラーリッサ王ペラスゴスの子とされています。トロイア戦争が勃発した際、彼は兄弟のピュライオスと共に、陥落寸前のトロイアを救援するために参戦しました。アポロドーロスはラーリッサからの武将としてヒッポトオス一人の名を挙げ、プリュギアのダレースの記録には、ヒッポトオスとクペサスの名前が見られます。

ホメーロスの叙事詩『イーリアス』では、ヒッポトオスはトロイア軍の武将として詳しく描かれています。彼は、ヘクトールがパトロクロスの遺体から奪ったアキレウスの武具を身に着けていたパトロクロスの遺体を、さらに奪い去ろうとした際に奮戦しました。ヒッポトオスはパトロクロスの遺体の両足首に縄をかけ、味方の陣地へ引きずろうと試みます。しかし、その時、アカイア軍の大英雄である大アイアースが激しい乱戦の中から飛び出し、手にした槍でヒッポトオスの兜を力強く突き刺しました。その一撃により、兜は粉々に砕け散り、ヒッポトオスは脳髄をまき散らして絶命しました。彼の戦友であるパイノプスの子ポルキュスはヒッポトオスを庇おうとしましたが、同じく大アイアースによって討ち取られました。アカイア軍は、この二人の遺体を運び去り、彼らの武具を剥ぎ取ったとされています。

トロイア戦争の終盤に関するクレーテーのディクテュスの記述では、パトロクロスの埋葬後の戦闘で、ピュライオスやヒュタルコスの子アシオスと共にヒッポトオスが討たれたと述べられています。また、プリュギアのダレースの記録では、パトロクロス埋葬後の戦いで、エウペーモス、ピュライオス、アステロパイオスらと共に、アキレウス自身によって討ち取られたと記されています。

プリアモスの子ヒッポトオス

トロイアの王プリアモスにも、ヒッポトオスという息子がいました。アポロドーロスによれば、彼はプリアモスの庶子の一人です。トロイア戦争の最中にメーストール、トローイロス、ヘクトールといった有力な兄弟たちが戦死したため、プリアモスは生存していた他の8人の息子たち、ヘレノス、パリス、アガトーン、パムモーン、アンティポノス、ポリーテース、デーイポボス、ディーオスと共に、このヒッポトオスを叱責したと伝えられています。

ケルキュオーンの子ヒッポトオス

アルカディアー地方に伝わる王統において、ステュムパーロスの子アガメーデースの子ケルキュオーンの子がヒッポトオスです。彼はアイピュトスの父にあたります。当時のアルカディアーを治めていたアガペーノール王がトロイア戦争から帰還しなかったため、ヒッポトオスが王権を継承しました。彼は王都をこれまでのテゲアーからトラペズースへと遷都したと記録されています。

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