ピョートル・ウスペンスキー

ピョートル・デミアノヴィッチ・ウスペンスキー：神秘思想家の生涯と思想

ピョートル・デミアノヴィッチ・ウスペンスキー（1878年3月4日-1947年10月2日）は、20世紀を代表するロシアの神秘思想家です。ジャーナリストとしての活動のかたわら、神秘主義、数学、哲学を深く探求し、多くの著作を残しました。彼の生涯と思想は、神秘思想史における重要な位置を占めています。

グルジエフとの出会い

1915年、ウスペンスキーは運命的な出会いを果たします。それは、後の彼の思想に多大な影響を与えることになる、神秘思想家ゲオルギイ・グルジエフとの出会いでした。モスクワのカフェで出会ったグルジエフは、ウスペンスキーに強烈な印象を与えました。東洋の紳士を思わせる風貌と異様な雰囲気は、ウスペンスキーをグルジエフの神秘的な世界へと引き込みました。この出会いをきっかけに、ウスペンスキーはグルジエフの教えに深く傾倒し、8年間を共に過ごします。この経験は、彼の代表作『奇蹟を求めて（原題：知られざる教えの断片）』に詳細に記されており、グルジエフ思想を理解する上で重要な資料となっています。

グルジエフとの決別と独自体系の構築

グルジエフに対する深い尊敬と傾倒にもかかわらず、ウスペンスキーは最終的にグルジエフのもとを離れる決断をします。その理由は、グルジエフの方法論とウスペンスキー自身の気質の相違にあるとされています。1917年頃より、ウスペンスキーはグルジエフ個人とグルジエフの教えを区別するようになり、1924年にはロンドンでの講義で完全に決別を宣言しました。

決別後、ウスペンスキーはグルジエフの教えを「システム」と呼び、独自に研究を進めます。秘教的な源泉からの直接的な啓示を待ち望んでいたものの、思うように得られなかったようです。イギリスを拠点に講演活動などを続け、1940年にはアメリカに移住。1947年にイギリスに戻った後、まもなく死去しました。イギリスでは多くの文化人に影響を与え、彼の死後も、その思想は様々な形で受け継がれています。

思想の変遷

グルジエフとの出会いは、ウスペンスキーの思想に大きな転換をもたらしました。グルジエフに出会う以前の著作『ターシャム・オーガナム』は、彼の初期の思想をよく反映しています。一方、グルジエフとの決別後、ウスペンスキーはグルジエフ思想とも『ターシャム・オーガナム』とも異なる、独自の思想体系を構築しようと試みました。それは、秘教的、あるいは思想的な源泉を持たないまま、言語によって「示しえないもの」を定式化しようとする野心的な試みでした。しかし、本源的な変化をもたらす思想としては、不十分であった可能性も否めません。

主要著作

ウスペンスキーの主要な著作には以下のようなものがあります。

『奇蹟を求めて』（平河出版）
『宇宙の新しいモデル』（コスモス・ライブラリー）
* 『ターシャム・オルガヌム』（コスモス・ライブラリー）

これらの著作は、彼の思想を理解する上で欠かせないものです。彼の生涯と思想を学ぶことで、神秘主義、哲学、そして人間の存在意義について、新たな視点が得られるでしょう。

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