ピラミッド (1955年の映画)

『ピラミッド』（原題：Land of the Pharaohs）は、1955年に公開されたアメリカ合衆国による歴史スペクタクル映画です。古代エジプトを舞台に、壮大なピラミッド建設と、それを巡る陰謀を描いた作品となっています。監督は巨匠ハワード・ホークス、脚本はノーベル文学賞を受賞したウィリアム・フォークナーが手掛けており、その豪華な制作陣にも注目が集まりました。

映画は、古代エジプトのファラオであるクフ王の物語から始まります。クフ王は、死後の来世における栄光を願って、巨大なピラミッドの建設を命じます。その建設には、捕虜となったクシャイト族の族長ヴァシュタルが、ピラミッドの設計図作成と建設指揮を任されることになります。ピラミッド建設は、莫大な時間と労力を必要とする大事業であり、民衆は過酷な労働に苦しめられることになります。

一方、クフ王は隣国キプロスの王女ネリファを側室に迎え入れます。美しいネリファは、王の莫大な富と権力に目をつけ、王を排除してエジプトを支配しようと企みます。彼女はまず、王が出兵中に王の正室であるナイラを策略によって殺害し、その座を奪います。そして、王の暗殺を企て、奴隷を使って王に襲いかかります。クフ王は負傷しますが、何とか一命を取り留め、エジプトへと帰還します。しかし、すでにネリファの陰謀は深く根付いており、王はまもなく息を引き取ります。

15年という歳月を経て、ついにピラミッドは完成します。ピラミッド内部では、王族や臣下たちが参列する中、クフ王の壮大な葬儀が執り行われます。儀式が終わり、石棺の蓋が閉ざされた瞬間、ネリファはエジプトと王の宝物が自分のものになることを確信し、ほくそ笑みます。しかし、その直後、地響きと共にピラミッド内部の全ての通路は巨石で塞がれてしまいます。巧妙に仕掛けられた秘密の設計によって、ネリファをはじめ、葬儀に参列した全員が、クフ王と共にピラミッドの中に閉じ込められてしまうのです。

この映画は、単なる歴史劇にとどまらず、人間の欲望と野望、そして権力の脆さを描いた、見応えのある作品となっています。また、エジプト政府の全面的な協力のもと、1万人以上のエキストラを動員した大規模な撮影が行われたことも、本作の大きな特徴です。古代エジプト文明の壮大さと、その陰に潜む人間の業を、鮮やかに描き出した、忘れ難い歴史映画と言えるでしょう。

映画の完成には、エジプト政府による全面的な協力が不可欠でした。膨大な数のエキストラや、実際の古代遺跡を舞台とした撮影など、制作規模は非常に大きく、当時の映画制作において画期的なものでした。特に、1万人以上のエジプト陸軍兵士が奴隷役として参加したことは、映画史に残る一大イベントと言えるでしょう。彼らの参加によって、古代エジプトの社会情勢やピラミッド建設における人々の苦労をリアルに表現することに成功しています。

『ピラミッド』は、歴史的事実とフィクションを巧みに融合させた、娯楽性と芸術性を兼ね備えた作品として高く評価されています。壮大なスケールと緻密な描写、そして人間の業を描いた深みのあるストーリーは、現代においても多くの観客を魅了し続けています。

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