ピンアン

ピンアンについて

ピンアンは、明治時代の1904年に糸洲安恒によって創作された空手の型であり、主に五つの段から構成されています。この型は首里手系の基本型として位置づけられていますが、現在では多くの流派や会派でも取り入れられています。ピンアンの名称は漢字で「平安」と表記され、その歴史は比較的新しいもので、他の空手の型に比べて創作者が明確である点が特徴です。

歴史的背景

空手の型の多くは創作者が不明な場合が多い中、ピンアンはその創作時期が明確に記録されています。1904年の春、糸洲はこの型を初めて公表し、その後しばらくの間にいくつかの改良が施されたと考えられています。そのため、糸洲直系の流派でも、ピンアンの挙動には細かな違いが見られることがあります。初期の弟子である本部朝基の話によれば、もともとピンアンは「チャンナン」と呼ばれており、挙動にも少し異なる点があったとされています。

本部によると、晩年に糸洲に型の変化について問いかけたところ、糸洲は「現在の型に決定されたのは皆の意見によるものであり、学生たちの意見を尊重した」と答えたとのことです。これは、チャンナンという名称がすでに明治10年代には存在していたことを示唆しています。

ピンアンの構成と特性

ピンアンは、公相君（クーサンクー）などの従来の型から動作が採用されており、基本的な動きの中にその特徴が組み込まれています。沖縄県の学校体育に導入されたことが、ピンアンの普及を助け、現在では多くの流派の基本型として親しまれています。しかしながら、糸洲の初期弟子やその直系以外の流派では、ピンアンが採用されていない場合もあります。

また、糸洲の師範代であった屋部憲通は、ピンアンの稽古時間を他の型の稽古に充てた方が良いと考え、ピンアンの体育目的に対して否定的な意見を持っていたことが記録されています。そのため、実際の師範学校では、ナイハンチが主に稽古され、ピンアンは関心のある者に限られていたようです。

名称と読み方の変遷

名称「平安」は、中国の漢字で表されますが、日本では松濤館流などの流派において「へいあん」と読むように日本風に改められています。また、初段と二段の順序は船越義珍が学習しやすさを考慮して独自に変更したため、いくつかの流派で異なる挙動が存在します。

現代のピンアン

現在、ピンアンは伝統派の他にも、極真会館をはじめとするフルコンタクト空手の各派でも稽古されています。分かりやすい動作とその歴史的背景から、ピンアンは新たな練習者にも親しまれる存在であり続けています。さまざまな流派での受容や変化を通じて、この型は今後も多くの人々に伝承され、発展し続けることでしょう。

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