ピンク・マルティーニ

ピンク・マティーニ

ピンク・マティーニ（Pink Martini）は、アメリカ合衆国オレゴン州ポートランドを拠点に活動するジャズアンサンブルです。1994年、ピアニストのトーマス・ローダーデールによって結成されました。当初は5人編成のクインテットとして活動を開始しましたが、1997年に女性ボーカリストのチャイナ・フォーブスが正式メンバーとして加入したことで、グループは12人体制に拡大。その後もメンバー構成は変動し、遅くとも2010年代には13人編成となっていました。

彼らの音楽スタイルは非常にユニークで、ジャズを基盤としながらも、ラテン、クラシック、ポップス、そして世界各国の音楽のエッセンスを融合させています。チャイナ・フォーブスをはじめとするボーカリストたちは、英語だけでなく、フランス語、スペイン語、イタリア語、日本語、ポルトガル語、トルコ語、ギリシャ語、アラビア語、中国語など、実に多様な言語で歌唱し、楽曲ごとに異なる雰囲気と世界観を表現します。この多言語かつジャンルレスなアプローチが、ピンク・マティーニを国際的に高く評価される存在にしています。

日本においては、活動初期にユニバーサルミュージックに所属していた際には「ピンク・マルティーニ」という表記が用いられていましたが、後にポニーキャニオンへ移籍した際に「ピンク・マティーニ」へと変更され、現在はこの表記が一般的となっています。

由紀さおりとのコラボレーションと紅白歌合戦

ピンク・マティーニは、日本の歌手である由紀さおりとのユニークなコラボレーションでも知られています。2011年にリリースされた由紀さおりとの共作アルバム『1969』は、日本の歌謡曲やポップスをピンク・マティーニのアレンジでカバーした作品で、アメリカのiTunesジャズチャートで第1位を獲得するなど、国内外で大きな話題を呼びました。この成功がきっかけとなり、由紀さおりは2012年の大晦日に放送された「第63回NHK紅白歌合戦」に単独での出場を果たしました。例年、姉の安田祥子とのデュオで出場することが多かった由紀さおりにとって、この単独出場は異例のことでした。

番組本番では、由紀さおりとピンク・マティーニは、彼らの本拠地であるオレゴン州ポートランドに位置するアーリン・シュニッツァー・コンサート・ホールから生中継で共演しました。演奏されたのは、由紀さおりのデビュー曲である『夜明けのスキャット』。国境を越えたこのパフォーマンスは、多くの視聴者に感動を与えました。

主なディスコグラフィ

ピンク・マティーニは、結成以来、精力的にアルバムを発表しています。彼らの代表的な作品としては以下が挙げられます。

『サンパティーク』 (Sympathique, 1997年): デビューアルバム。タイトル曲をはじめ、「Amado Mio」、「¿Donde Estas, Yolanda?」などが収録され、彼らの多様な音楽性が早くも示されています。
『ハング・オン・リトル・トマト』 (Hang on Little Tomato, 2004年): 彼らの代表曲の一つであるタイトル曲や、日本語で歌われる「菊千代と申します」を含むアルバム。
『ヘイ・ユジーン』 (Hey Eugene!, 2007年): 多様な言語の楽曲がさらに増え、国際的なスタイルを確立しました。
『草原の輝き』 (Splendor in the Grass, 2009年): より洗練されたサウンドを聴かせます。
『Joy to the World』 (2010年): クリスマスアルバム。定番のクリスマスソングから各国の冬の歌までをカバー。
『1969』 (2011年): 由紀さおりとのコラボレーション作品。
『レトロスペクティヴ』 (Retrospective, 2011年): これまでの活動を網羅したベストアルバム。様々なボーカリストとの共演曲なども収録されています。
『ゲット・ハッピー』 (Get Happy, 2013年): ストーム・ラージなど、新たなボーカリストもフィーチャーしています。
* 『ドリーム・ア・リトル・ドリーム』 (Dream a Little Dream, 2014年): ザ・フォン・トラップスとの共作。子供向けの楽曲や各国の童謡などをカバーしたユニークなアルバムです。

これらのアルバムに加え、ライブ映像作品として2009年にはDVD『ピンク・マティーニ・ライヴ、ディスカヴァー・ザ・ワールド』もリリースしており、彼らのダイナミックなライブパフォーマンスの様子を見ることができます。

ピンク・マティーニは、特定のジャンルに縛られることなく、世界中の音楽を吸収し、独自のサウンドとして昇華させ続ける稀有な存在です。その普遍的でありながら斬新な音楽は、今も世界中のリスナーを魅了し続けています。

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