ピンザアブ洞人

ピンザアブ洞人について

ピンザアブ洞人は約25,800年から26,800年前、旧石器時代にさかのぼる化石人骨です。この人骨は1979年に沖縄県宮古島市にあるピンザアブと称される洞穴で発見されました。ピンザアブの名称は、宮古方言に由来し、「ピンザ」は「ヤギ」、「アブ」は「洞穴」を意味しています。つまり、「ピンザアブ」とは「ヤギの洞穴」という意味になります。

発見の経緯

洞穴の調査は1974年に愛媛大学によって始まり、洞穴の規模が明らかになりました。その後、沖縄県内の農業発展とともに、石灰岩洞穴の消失が懸念され、1977年から1979年にかけて「沖縄県洞穴実態調査」が行われました。この調査の一環として、1980年に沖縄の研究者たちによってピンザアブの詳細な調査が実施され、数多くの化石動物の骨や人骨が発見されました。

最初の発見は後頭骨片であり、その後にさらなる骨の発見が続きました。特に、横浜国立大学の長谷川善和が行った1980年の調査では、後頭骨片や脊椎骨、乳歯などが追加で見つかりました。これらの骨について、国立科学博物館の佐倉朔による鑑定の結果、港川人と共通点があることが明らかになりました。

詳細な調査

この発見を受けて、沖縄県教育委員会は地質学、古生物学、人類学、考古学の専門家を集めたチームを編成し、3年間にわたり「ピンザアブ洞穴発掘調査」を実施しました。この調査ではより多くの人骨が発見され、年代測定も行われました。結果として、ピンザアブ洞人は旧石器時代の重要な人類の一部であることが確認されました。

年代と特徴

ピンザアブ洞人の年代は約25,800から26,800年前であり、これは山下洞人（約32,000年前）と港川人（約18,000年前）のちょうど中間に位置しています。また、白保竿根田原洞穴遺跡で見つかった全身骨格（約27,000年前）ともほぼ同時代のものであり、形態分析では港川人と連続性を示しつつも、若干古い新しい特徴を持っていることが分かっています。

発見された骨は複数の個体であり、壮年の男女や子どもを含んでいることが確認されていますが、彼らの日常生活や文化、行動に関する直接的な状況は発見されていません。これは、彼らの生活の様子を解明する手がかりが少ないことを意味します。

文化的・歴史的意義

1981年、ピンザアブ洞人の遺跡は上野村（現在は宮古島市）の史跡として指定されました。このことで、遺跡の重要性が改めて認識され、保存活動や研究が促進されるきっかけとなりました。

現在（2010年）の時点で、ピンザアブ洞人の骨は動物化石と共に東京都新宿区の国立科学博物館新宿分館に保管されていましたが、2012年には資料が筑波地区に集約されました。これにより、ピンザアブ洞人は沖縄の人類史を探求する上で欠かせない存在となっています。

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