ピンボールの魔術師

ピンボールの魔術師

「ピンボールの魔術師」（英: Pinball Wizard）は、イングランドのロックバンドザ・フーが1969年にリリースした楽曲で、彼らのロックオペラ『トミー』の中でも特に有名な一曲です。この楽曲はメンバーのピート・タウンゼントによって作詞・作曲され、音楽シーンに大きな影響を与えました。

背景

楽曲のストーリーは、主人公のトミー・ウォーカーが三重苦にもかかわらず、ピンボールの大会で当地の王者を破る様子を描いています。物語は負けた若者の視点で語られ、トミーの持つ「ピンボールの魔術師」という称号が曲のタイトルにもなっています。この曲の誕生には、ロック評論家ニック・コーンとの会話が大きな影響を与えました。タウンゼントのピンボールに対する情熱が楽曲制作につながったのです。また、アコースティック・ギターには、タウンゼントが1968年に手に入れたギブソンJ-200が使われています。

シングル版はアルバム版よりもテンポが速く、曲調が軽快に仕上げられました。さらに、シングルのB面には、未発表のインストゥルメンタル「ドッグズ・パート2」が収録されています。この楽曲の作曲クレジットには、メンバーのキース・ムーンと彼の愛犬の名前も記されています。

反響・影響

「ピンボールの魔術師」は、リリース直後から注目を集めました。全英アルバムチャートでは第4位を記録し、ザ・フーにとって9作目となるトップ10ヒットとなりました。アメリカのBillboard Hot 100では19位に達し、彼らの音楽の人気を再確認させました。さらに、ショッキング・ブルーの「ヴィーナス」に影響を与えたという話もあります。

1994年には、同曲のタイトルを冠したピンボールゲームが市販され、2008年には音楽ゲーム『Rock Band 2』でも取り上げられるなど、時代を超えて愛される楽曲となっています。また、『タイム』誌の企画「最も愛されている魔法使いトップ10」では、トミーが持つピンボールの技術が魔法のようであると評され、8位にランクインしました。

カヴァー

この楽曲は多くのアーティストによってカヴァーされています。ロッド・スチュワートは1972年のアルバム『トミー』でこの曲を独唱し、さらにチャリティーコンサートでもパフォーマンスを披露しました。エルトン・ジョンも1975年の映画『トミー』でピンボールチャンピオン役を演じ、自身の形でこの曲をカバーしました。ジョンのバージョンは全英シングルチャートで7位にランクインし、アーティストとしての地位をさらに確立しました。

他にもさまざまなアーティストがこの曲を取り上げ、例えばニュー・シーカーズ、シャドウズ、ペトゥラ・クラーク、アレックス・スコルニック・トリオなど多岐にわたります。2012年のロンドンオリンピックの閉会式でもカイザー・チーフスが演奏し、その影響力は現在も色褪せることがありません。

結論

ザ・フーの「ピンボールの魔術師」は、ただの音楽作品を超え、文化的な象徴と化しています。その物語性、音楽的遺産、そして数々のアーティストによるカヴァーにより、時代を越えて楽しむことができる楽曲となっています。

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