ピーターラビットとわたし

大貫妙子「ピーターラビットとわたし」：絵本の世界観と洗練された音楽性の融合

1982年9月21日、大貫妙子の9枚目のシングル「ピーターラビットとわたし」が、アルバム『Cliché』と同時発売されました。キユーピーマヨネーズのCMソングとしても話題を呼び、アルバム『Cliché』を代表する楽曲の一つとして現在も高い人気を誇ります。

A面：ピーターラビットとわたし

この曲は、イギリスの作家ビアトリクス・ポターの代表作『ピーターラビット』シリーズをモチーフにした楽曲です。大貫妙子自身による絵本への愛着、そして当時感じていた創作上の変化が、この楽曲制作の背景にありました。

従来の男女を主人公とする楽曲制作に飽きを感じていた大貫妙子は、誰もが知る童話の人気キャラクターであるピーターラビットに自身の感情を投影させることで、新たな表現に挑戦しました。単純な恋愛をテーマにした場合に陥りがちな甘ったるさを回避するため、主人公を人間ではなくピーターラビットとすることで、童話独特の皮肉や比喩、可愛らしさの裏側に潜む危うさなどを巧みに表現しています。曲中に聴こえる笑い声は、大貫妙子自身の声を録音し、早回し加工したものです。編曲は坂本龍一が担当し、大村憲司がギターで参加するなど、豪華なミュージシャン陣が楽曲に彩りを添えています。

B面：光のカーニバル

B面「光のカーニバル」は、控えめなストリングスとシャンソン風のワルツが織りなす、フランスのムードが漂う楽曲です。編曲は、フランス・パリ出身でフランシス・レイの作品も手掛けたジャン・ミュジーが担当。レコーディング時、楽曲制作者が大貫妙子であることを知ったジャン・ミュジーは、その洗練された音楽性に驚きを隠せないほど感動したという逸話が残っています。シンガー[[ソングライター]]の青葉市子もこの曲を高く評価しており、「時間が曖昧に、ぼやーっと溶けていく感じが好きなんです。」とコメントしています。

ジャケットと収録アルバム

シングルのジャケット写真には、同時発売されたアルバム『Cliché』の別カットが使用されています。

「ピーターラビットとわたし」は、『Cliché』以外にも多くのアルバムに収録されており、その人気と幅広い世代への訴求力の高さを示しています。代表的な収録アルバムには、『Comin' Soon』『NEW BEST 大貫妙子』『History 1978-1984』などがあります。さらに、ライブアルバムやベストアルバムにも収録されており、大貫妙子の代表曲として長く愛され続けていることが分かります。

受容とその後

「ピーターラビットとわたし」は、2022年には「出版120周年 ピーターラビット展」の公式イメージソングとして起用されるなど、現在でも高い人気を誇っています。この楽曲は、大貫妙子の音楽性と、普遍的な童話の魅力が見事に融合した、長く愛される名曲と言えるでしょう。楽曲の持つ独特の雰囲気、そして洗練されたサウンドは、時代を超えて聴く人の心を捉え続けています。楽曲に込められた、大貫妙子自身の心情や、童話の世界観への深い理解が、聴く者に深い感動を与え続けていると言えるでしょう。

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