ピーター・ケンバー

ピーター・ケンバー（ソニック・ブーム）

ピーター・ケンバーは、1965年11月19日にイギリスで生まれたミュージシャンです。サイケデリック・ロックバンド、スペースメン3の黎明期を支えた中心メンバーとして知られ、ソニック・ブームのアーティスト名でも活動しています。

来歴

ウォリックシャー州ラグビーで偶然にも同日に生まれたジェイソン・ピアースと共に、1985年にスペースメン3を結成しました。バンドは独特の浮遊感とミニマリズムを持つサイケデリック・サウンドで注目を集めます。ケンバーはソニック・ブーム名義での最初のソロ・アルバム『Spectrum』を、スペースメン3の他のメンバーが関与しない形で1989年に制作しました。しかし、1991年頃までにピアースとの音楽的、個人的な関係は決定的に悪化し、ピアースはケンバーを除くメンバーと共に新たなバンド、スピリチュアライズドを結成し活動を始めました。

その後、ケンバーは新たなミュージシャンたちと共に、「スペクトラム」というバンド形態のプロジェクトと、「E.A.R.」（Experimental Audio Research、実験的音響研究）というより即興的、実験的なサウンドを追求するプロジェクトの二つを並行して展開していくことになります。

スペクトラム（Spectrum）

初期のスペクトラムは、スペースメン3後期に見られたサウンドの延長線上にあり、比較的従来のバンドスタイルを踏襲していました。最初のシングル「ハウ・ユー・サティスファイ・ミー (How You Satisfy Me)」は、1960年代のガレージロックのスタイルで既存曲を再構築したものです。1992年のアルバム『ソウル・キス（グライド・ディバイン） Soul Kiss (Glide Divine)』では、よりドローン的で実験的な楽曲が反復される傾向が見られましたが、1994年の『Highs, Lows and Heavenly Blows』では、再びメロディを重視したアプローチへと変化しました。この名義では、ジェサミンやシルヴァー・アップルズといった他のアーティストとの共演も行われています。

1996年からは、スペースメン3のオリジナルメンバーであるピート・ベインやエンジニアのアルフ・ハーディらと共に活動し、ヴィンテージ・アナログ・シンセサイザーが積極的に使用されました。この編成での成果である1997年のアルバム『フォーエヴァー・エイリアン Forever Alien』以降、新作発表は2008年にジム・ディッキンソンと共作した『Indian Giver』まで長らく途絶えました。

E.A.R.（Experimental Audio Research）

E.A.R.プロジェクトの最初のアルバム『Mesmerised』はケンバー単独で1994年にリリースされましたが、以降E.A.R.では様々なミュージシャンとのコラボレーションを通じて、実験的なサウンドスケープを探求していきます。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのケヴィン・シールズ、即興音楽グループAMMのエディー・プレヴォーらが参加したアルバムや、ドイツのミニマルテクノ/ドローン音楽家トーマス・コーナーによるリミックス作も発表されました。

1998年のアルバム『Data Rape』では、機材を意図的にショートさせて予測不能なノイズや音色を得るサーキットベンディングのテクニックが導入され、その後のEPにも引き継がれています。特に2000年代初頭の作品には、1960年代にBBCレディオフォニック・ワークショップで活躍し、電子音楽や実験音楽のパイオニアとしてケンバー自身が多大な影響を受けたと公言するデリア・ダービーシャーとの共同作業によるものが含まれており、スペクトラムのアルバムには彼女に捧げられた楽曲も収録されています。E.A.R.としての活動はその後散発的になり、2005年のアルバム『Worn to a Shadow』を最後にリリースは途絶えています。

特殊なパッケージとフォーマット

ピーター・ケンバーは、その音楽性と同様に、リリースの物理的な形態においてもユニークな試みを数多く行っています。

ソニック・ブーム『Spectrum』LP：初回盤は回転オプ・アート仕様スリーブ、購入者特典のカラー10インチEP。
スペクトラム『ソウル・キス』LP：オリジナル版スリーブに液体が封入された珍しい仕様。
E.A.R.シングル：「Pocket Symphony」は5インチ、「Falling / Tail Chaser」は8インチピクチャー・ディスクでインフィニット・ループ付き。
E.A.R.シングル：「Telstar」はサーストン・ムーアとドン・フレミングとのスプリット7インチ。
* E.A.R.シングル：「Data Rape (Part 9)」は片面録音で反対面にデッサン入り7インチ。

これらの特殊なリリース形態は、彼の音楽と同様に、既存の枠にとらわれない自由な発想を示すものと言えるでしょう。

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