スペースメン3

イングランド中部、ウォリックシャー州ラグビーで誕生したスペースメン3は、ジェイソン・ピアース（J.Spaceman）とピーター・ケンバー（Sonic Boom）を中心に1982年に結成されたサイケデリック・ロックバンドです。ポスト・パンクやスペース・ロックといったジャンルに位置づけられ、その催眠的でミニマルなサウンドは後続のアーティストに多大な影響を与えました。

結成と初期活動

ラグビーのアート・カレッジで出会ったピアースとケンバーが中心となり、スペースメン3は活動を開始しました。結成当初は、ピアースとケンバーがギター、キーボード、ボーカルを担当し、ピート・“ベースマン”・ベインがベース、ナッティ・ブルッカーがドラムスというラインナップでした。彼らは地元ラグビーで数年間、楽曲制作やリハーサルを重ね、その基礎を築き上げました。

1986年、彼らはファーストアルバム『Sound of Confusion』を発表します。この作品は、メインストリームとは一線を画した生々しいガレージ・ロック・サウンドが特徴でした。

サウンドの変革と成功

ファーストアルバムとは対照的に、1987年のセカンドアルバム『The Perfect Prescription』では、バンドの方向性が大きく転換します。ここでは、彼らの代名詞ともなるミニマルで反復的なサイケデリアを基調としたサウンドが前面に押し出されました。この頃、ドラマーのナッティ・ブルッカーが脱退し、スターリング・ロズウェル（ロスコ）が後任として加入しました。

その後、ベースのベインとドラムスのロスコもバンドを離れ、彼らはザ・ダークサイドを結成します。スペースメン3には、ベースとしてウィリー・カラザースが加わりますが、ドラマー不在のまま、後にバンドの最高傑作の一つと評される『Playing with Fire』のレコーディングが行われました。1989年にリリースされたこのアルバムは、全編にわたってサイケデリックなドローン・ミュージックが展開され、特にシングルカットされた「Revolution」はイギリスのインディチャートで1位を獲得するなど、商業的な成功も収めました。

このアルバムのツアーでは、ジョン・マットックがドラマーとして参加しました。彼らは、派手な演出を排した「アンチ・ショー」と呼ばれるミニマルなライブでイギリスやヨーロッパ各地を回りました。しかし、薬物問題に起因するビザの問題から、予定されていたアメリカツアーは中止となり、レディング・フェスティバルへの出演をもってツアーは終了しました。

崩壊、終焉、そしてその後

バンド内では、特にピアースとケンバーの間で、薬物問題や音楽性の違いからくる不和が深刻化していきました。こうした状況は次第にバンドを内側から蝕んでいきます。1991年に発表された『回帰 Recurring』が、結果的に彼らの最後のオリジナルアルバムとなりました。このアルバムは、バンドの内部的な分裂を反映し、ピアースとケンバーがそれぞれ別のスタジオで制作した楽曲を中心に構成されています。マッドハニーのカバー曲「When Tomorrow Hits」も収録されたこの作品は、彼らのディスコグラフィの中でも最もポピュラーなものの一つとなりました。

『回帰 Recurring』のリリース後、バンドは事実上解散します。ケンバーはスペクトラムとして、ピアースはウィリー・カラザース、ジョン・マットックらと共にスピリチュアライズドを結成し、それぞれ新たな音楽活動を開始しました。スペースメン3は1991年にその歴史に幕を閉じました。

解散後も、コーチェラ・フェスティバルやオール・トゥモロウズ・パーティーズといった大型フェスティバルでの再結成の噂が度々持ち上がりましたが、ジェイソン・ピアースは一貫してこれを否定し続けました。しかし、2010年7月15日、ロンドンのホクストン・バー・アンド・グリルにて、ピーター・ケンバー、ウィリー・カラザース、ジョン・マットック、そしてバンド末期に参加したマーク・リフォイといったメンバーによる一度限りの再結成ライブが実現しました。このライブでは3曲が演奏され、会場には初期ドラマー、ナッティ・ブルッカーの作品も展示されました。また、ケヴィン・シールズやパット・フィッシュがゲスト出演しました。ジェイソン・ピアースも招待されていましたが、この場に姿を見せることはありませんでした。

スペースメン3は短命ながらも、その革新的なサウンドと実験精神によって、今日のサイケデリック・ロックやシューゲイザー、ドローン・ミュージックに続くアーティストたちに絶大な影響を与え続けています。

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