ピーター・ズントー

ピーター・ズントー（Peter Zumthor, 1943年4月26日 - ）は、スイスを代表する建築家の一人です。日本では一般的に「ピーター・ズントー」として知られていますが、彼の母語であるドイツ語の発音に近い表記は「ペーター・ツムトーア」となります。

生い立ちとキャリア

1943年、スイスのバーゼルで生まれたズントーは、幼少期から木工に親しむ環境で育ちました。家具職人である父親の下で職業訓練を受け、木工技術を習得しました。その後、バーゼルの造形学校で室内建築とデザインを学び、さらにニューヨークのプラット・インスティチュートでインダストリアルデザインを学びました。これらの経験は、彼の建築に対する独特な視点を形成する上で重要な役割を果たしました。

初期には、スイスのグラウビュンデン州で歴史的建造物の修復に携わりました。この経験を通して、既存の建築物に対する深い理解を培い、後の作品に影響を与えました。1979年、同州のハルデンシュタインに自身のアトリエを設立し、ここを拠点に建築家としての活動を開始しました。

建築スタイルと代表作

ズントーの建築は、素材の質感、光の扱い、そして場所の持つ雰囲気を重視することで知られています。彼の作品は、単なる機能的な構造物ではなく、人々の感情や記憶に訴えかけるような、感覚的な体験を提供します。

彼の代表作の一つである「テルメ・ヴァルス」は、スイスの山中に作られた温泉施設です。岩盤の中に埋め込まれたような設計で、自然光と水が織りなす静謐な空間が特徴です。素材の持つ力強さと、光の柔らかさが調和した空間は、訪れる人々に深い印象を与えます。

建築活動と並行して、スイスのルガーノ大学メンデリジオ建築アカデミーで教授を務め、後進の育成にも力を注ぎました。

著書

ズントーは、自身の建築に対する考え方を記した著書も発表しています。日本語訳されたものには、『建築を考える』と『空気感（アトモスフェア）』があります。これらの著書は、彼の建築哲学を深く理解するための貴重な資料となっています。

また、英語版では『Three Concepts』、『Thinking Architecture』、『Mathematical Analysis』、『Atmospheres』、『Peter Zumthor Therme Vals』などが発表されています。

受賞歴

ズントーは、数々の権威ある賞を受賞しています。1996年のエーリッヒ・シェリング建築賞、1998年のカールスベルグ建築賞、1999年のミース・ファン・デル・ローエ欧州建築賞など、国際的に高い評価を受けています。また、2008年には高松宮殿下記念世界文化賞、2009年には建築界のノーベル賞とも称されるプリツカー賞を受賞し、その功績が広く認められました。2013年にはRIBAゴールドメダルも受賞しています。

関連文献

彼の作品や思想について深く知るための文献も多数存在します。例えば、『a+u臨時増刊 ピーター・ズントー』や『Casa BRUTUS 2003年12月号』、『エスクァイア日本版 2004年10月号』などが挙げられます。

外部リンク

彼の講演や作品に関する情報は、以下のウェブサイトで確認できます。

第48回 現代建築セミナー（アイカ工業株式会社）
スイス政府観光局（日本語）：スイスの近現代建築

ズントーの建築は、単に美しいだけでなく、人々の感情や経験に深く訴えかける力を持っています。彼の作品は、建築が単なる構造物ではなく、場所の記憶や人々の感情を宿すことができることを示唆しています。

もう一度検索