ピーター・ドノホー

ピーター・ドノホー

ピーター・ドノホー（Peter Donohoe）は、1953年6月18日にイギリスのマンチェスターで生まれた、世界的に著名なピアニストです。

音楽教育は、地元の王立ノーザン音楽大学でデレク・ワインダムに師事することから始まりました。その後、パリに渡り、高名なイヴォンヌ・ロリオのもとで研鑽を積みました。しかし、ピアニストとしての道を歩む前に、彼はバーミンガム市交響楽団で一時的に打楽器奏者として活動していたという異色の経歴を持っています。

彼のキャリアにおける大きな転機となったのは、1982年に開催されたチャイコフスキー国際コンクールでした。この大会では1位該当者なしという結果でしたが、ドノホーはロシアのウラディーミル・オフチニコフと共に2位に入賞。この輝かしい成果により、彼は一躍国際的な音楽界の脚光を浴びることとなり、ピアニストとしての活動を本格化させました。

順調なキャリアを歩む中、1992年にはシンシナティ滞在中にホテルの窓で左手の指に怪我を負うというアクシデントに見舞われます。しかし、手術を経て比較的早期に回復し、再び舞台に戻ることができました。

ドノホーは、かつて打楽器奏者として在籍していたバーミンガム市交響楽団とはピアニストとしても深い繋がりを持ち続けました。特に指揮者のサイモン・ラトルとは良好な関係を築き、ラトルが同楽団の首席指揮者を務めていた時期から、数多くの演奏会や録音で共演を重ねています。ラトルが2002年にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者に就任して最初に行われた演奏会でも、ドノホーはソリストとして招かれ、その信頼関係の深さを示しました。

ピーター・ドノホーの芸術家としての最大の特徴の一つは、その驚くほど広範なレパートリーです。彼は協奏曲だけでも160曲を超える作品を演奏できるとされており、その守備範囲は多岐にわたります。

彼のレパートリーには、チャイコフスキーやラフマニノフのピアノ協奏曲、メシアンのピアノ曲といった、ロマン派から近現代に至る主要な作曲家の代表的作品が含まれるのはもちろんのこと、さらに探求心に満ちたプログラムを展開します。

例えば、19世紀ヨーロッパの比較的演奏機会の少ない協奏曲、具体的にはリトルフやブゾーニといった作曲家の作品も積極的に取り上げています。加えて、20世紀のイギリス人作曲家によるピアノ協奏曲、例えばブリスやマルダウニーといった作品も彼の得意とする領域です。イギリスの作曲家では、マイケル・ティペットのピアノソナタも重要なレパートリーとしています。

ソロや協奏曲の分野だけでなく、ドノホーは優れた室内楽奏者としても精力的に活動しており、様々なアンサンブルとの共演を通じて音楽の幅を広げています。彼の多様な音楽活動と、常に新しい作品に挑戦し続ける姿勢は、多くの聴衆や批評家から高い評価を受けています。

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