ピーター・ビヨーン・アンド・ジョン

結成とユニークな始まり

ピーター・ビヨーン・アンド・ジョン（Peter Bjorn and John）は、北欧スウェーデンを拠点に活動するロックバンドです。1999年、スウェーデンの首都ストックホルムにて産声をあげました。バンドを構成するのは、スウェーデン中部のダーラナ出身のピーター・モーレン（Peter Morén）、さらに北方のヴェステルボッテン出身のビヨーン・イットリング（Björn Yttling）、そして彼らよりさらに北部出身のジョン・エリクソン（John Eriksson）という、それぞれ異なる地域のバックグラウンドを持つ3人のミュージシャンです。

彼らは1999年から共に音を奏で始め、翌2000年に正式なバンドとして活動を開始しました。バンド名については、彼らのファーストネームであるピーター、ビヨーン、ジョンをシンプルに繋げた「ピーター・ビヨーン・アンド・ジョン」を選びました。これは単に他に良い名前が思いつかなかったからではなく、彼らにとって最も自然で正しいと感じられる名前だったからです。「どうして他のバンドは、普通にメンバーの名前を冠しないのだろう？」と彼らは常々疑問に思っていたといいます。結成当初はベースプレイヤーを迎え入れることも検討しましたが、「3人いれば十分すぎる（3 is a crowd）」という格言になぞらえ、元々キーボードを担当していたビヨーンがベースも兼任する現在のスリーピース編成となりました。

音楽活動の軌跡

バンドは着実に楽曲制作を進め、2002年に自主制作によるファースト・アルバム『Peter Bjorn And John』をリリースしました（この作品は日本未発売）。このホームレコーディングされたアルバムは、リリース後すぐに批評家から注目を集め、「優れたサウンドスケープ」「次世代のクラシック」といった賛辞が贈られました。収録曲の中でも「Matchmaker」や「People They Know」といった楽曲は、インディー・ポップ愛好家たちの間で瞬く間にお気に入りとなり、ロンドンの名門レコードショップであるラフ・トレードは、「現在のスウェディッシュ・ポップの中でこれほど素晴らしいものは他にない」と絶賛し、アルバムに高い評価を与えました。

続くセカンド・アルバム『Falling Out』（こちらも日本未発売）は2004年に発表されました。このアルバムからのシングル「It Beats Me Everytime」は、母国スウェーデンでラジオヒットを記録します。翌2005年にはアメリカでもリリースされ、音楽批評サイトのオールミュージックからは5点満点中4.5点という非常に高い評価を獲得しました。「2005年にリリースされたインディー・ロック作品の中で、限りなく最高に近い出来栄え。コンクリーツよりもパンキッシュで、シャウト・アウト・ラウズほど熱狂的ではなく、そしてイギリスのポストパンクバンドと同等にキャッチーだ」と評され、その音楽性が広く認められました。

彼らの名声を決定づけたのは、2006年に発表されたサード・アルバム『ライターズ・ブロック』でした。このアルバムは、ビヨーンがストックホルムのホルンストゥルに構える自身のスタジオでレコーディングされました。特筆すべきは、この作品からメンバー全員がソングライターとしてクレジットされ、全員がリードボーカルを分担するようになった点です。アルバムに先駆けてリリースされたシングル「Young Folks」は、その印象的な口笛のメロディーで瞬く間にリスナーを魅了し、スウェーデンの国営ラジオ局P3で16週間にわたりAローテーション入りする大ヒットを記録しました。アルバム自体のヒットも相まって、彼らはイギリスの名門インディーレーベルであるウィチタ・レコーディングス（ブロック・パーティーやザ・クリブスらが所属）との契約を獲得します。

2006年8月7日にイギリスで正式リリースされた「Young Folks」は、UKシングルチャートで最高35位にランクインし、トップ40ヒットとなりました。このキラーチューンは、そこからヨーロッパ全土へとまたたく間に広がり、ピーター・ビヨーン・アンド・ジョンの名前を一躍世界に知らしめることとなります。この楽曲におけるチャーミングな女性ボーカルは、同じくスウェーデンのバンド、コンクリーツのヴィクトリア・バーグスマンが担当しました。アルバム『ライターズ・ブロック』は8月14日にリリースされ、『NME』誌で10点満点中9点を獲得するなど、各国の主要音楽メディアから絶賛され、彼らの代表作となりました。

その後もバンドは精力的に活動を続け、2008年にはインストゥルメンタルアルバム『Seaside Rock』をリリース。2009年には4作目となる『Living Thing』を発表しました。2011年のアルバム『Gimme Some』からはシングルカットされた「Second Chance」が、アメリカの人気シットコム『NYボンビー・ガール（2 Broke Girls）』の主題歌およびBGMとして使用され、再び多くの人々の耳に届きました。その後も2016年に『Breakin' Point』、2018年に『Darker Days』、2020年に『Endless Dream』と、コンスタントに作品を発表し、洗練されたメロディーと普遍的なポップセンスでリスナーを魅了し続けています。

また、「Young Folks」は日本でも広く親しまれ、サントリーの缶コーヒー『ボス レジェンドブレンド ～伝説の香り～』のCMソングとして使用されました。

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