ピート・インカビリア

ピート・インカビリア：豪快なプレースタイルで日米を沸かせたスラッガー

ピーター・ジョセフ・インカビリア（Peter Joseph "Pete" Incaviglia , 1964年4月2日 - ）は、アメリカ合衆国カリフォルニア州出身の元プロ野球選手（外野手）です。その豪快な打撃と、時に見せる激しい気性で、日米の野球ファンを魅了しました。

大学時代：記録を塗り替えた伝説のスラッガー

オクラホマ州立大学時代、インカビリアはアメリカ大学野球史上最高の長距離打者の1人として名を馳せました。NCAAの通算本塁打100本、シーズン本塁打48本、シーズン143打点という驚異的な記録を樹立。これらの記録は、2023年現在においても破られていません。2007年には、アメリカ大学野球殿堂入りを果たしています。

MLBでの活躍：ドラフト1巡目指名からメジャーへ

1985年のMLBドラフト1巡目（全体8位）で、モントリオール・エクスポズから指名を受けますが、マイナーでのプレーを拒否。南部のテキサス・レンジャーズへの移籍を前提にエクスポズと契約し、直後にレンジャーズへ移籍しました。翌1986年には、マイナーリーグの経験なしに開幕戦で4番打者として起用されるという異例のデビューを飾ります。

ルーキーイヤーから30本塁打を放ち、新人王こそホセ・カンセコに譲ったものの、レンジャーズで5年連続20本塁打以上を記録するなど、期待に応える活躍を見せました。その後、デトロイト・タイガース、ヒューストン・アストロズ、フィラデルフィア・フィリーズと渡り歩き、一度もマイナーリーグ降格を経験することはありませんでした。

エクスポズとの契約直後の移籍劇を受け、MLBでは「ドラフトで獲得した選手は契約して1年が経過するまではトレードに出せない」という規則が追加されました（後に緩和）。これは「ピート・インカビリア・ルール」として知られています。

千葉ロッテマリーンズでの挑戦：日本の野球への苦悩

1995年、千葉ロッテマリーンズの監督に就任したボビー・バレンタインに誘われ、テスト入団。フリオ・フランコとともに打線の軸として期待されました。しかし、日本の野球に馴染めず打率1割台と低迷。日米のストライクゾーンの違いや環境の違い、投手の攻め方の差に苦しみ、シーズン中に二軍落ちも経験しました。

不本意な成績に終わり、1年限りでロッテを退団しましたが、翌1996年に古巣フィリーズにマイナー契約で復帰。自身初のマイナー生活を経てメジャー復帰を果たし、16本塁打を放ちました。その後、ボルチモア・オリオールズ、ニューヨーク・ヤンキースなどでプレーしました。

引退後：独立リーグの監督として

1999年以降は、メキシカンリーグや独立リーグでプレーし、2002年に現役を引退。引退後は、独立リーグの監督として活動しています。2024年からは、アメリカン・アソシエーションのクリバーン・レイルローダーズの監督を務めることが決まっています。

トラブルメーカーとしての一面

インカビリアは、その激しい気性から、死球や審判の判定に激昂する場面も少なくありませんでした。1995年の対近鉄戦では、ストライク、ボールの判定を巡って審判に暴言を吐き退場。同年の近鉄戦では、入来智から頭部付近に死球を受けた後、マウンドに走って入来に暴行を働く乱闘騒ぎを起こし退場処分を受けています。これらのシーンは、同年のプロ野球珍プレー・好プレー大賞で取り上げられ、話題となりました。

ピート・インカビリアは、その豪快なプレースタイルと、時に見せる激しい気性で、日米の野球ファンに強烈な印象を残した、記憶に残るスラッガーです。

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