ファイアー (オハイオ・プレイヤーズのアルバム)

『ファイアー』は、アメリカのファンクバンド、オハイオ・プレイヤーズが1974年にリリースした6枚目のスタジオアルバムであり、彼らの音楽キャリアにおける重要な転換点を示す作品です。このアルバムは、バンドにとって唯一のBillboard 200での1位を獲得し、R&Bアルバムチャートでも前作『スキン・タイト』に続き首位を独占しました。この成功は、単に商業的なものではなく、音楽的な完成度においても高い評価を受けています。

アルバムからのリードシングルであるタイトル曲「ファイアー」は、Billboard Hot 100とR&Bシングルチャートの両方で1位を獲得するという快挙を成し遂げました。この曲は、当時のディスコブームの中で発表されたにもかかわらず、ディスコサウンドとは一線を画す、ファンクの熱気と力強さに満ちた楽曲として、音楽ファンを魅了しました。続くシングル「自由の魂」もHot 100で44位、R&Bシングルチャートで6位を記録し、アルバムの成功をさらに確固たるものとしました。

音楽評論家からも高い評価を受けており、オールミュージックのアレックス・ヘンダーソンは、アルバムを「爆発的なホーンセクションが活躍するファンクの名曲“Smoke”、極めて中毒性の高いタイトル曲などを含む、予測不可能な傑作」と評し、5点満点中4.5点という高評価を与えています。彼はまた、「疑いなく、商業的にも芸術的にもオハイオ・プレイヤーズの最高傑作の一つ」と述べ、このアルバムがバンドのキャリアにおいて重要な位置を占めることを強調しました。さらに、ステレオガムのトム・ブライハンは、タイトル曲「ファイアー」について、「ディスコ時代の幕開けに全米1位を獲得したが、この曲自体はディスコソングではない。踊るのに適した曲であり、クラブでかかっていてもおかしくないが、そのグルーヴの種類は異なり、より汚らしく汗臭い、野性味のある曲である」と分析し、その独特な魅力と音楽的な深みを指摘しました。

アルバム収録曲は、リロイ・シュガーフット・ボナー、ビリー・ベック、マーシャル・ロック・ジョーンズ、ジェイムズ・ダイアモンド・ウィリアムズ、クラレンス・サッチ・サッチェル、マーヴィン・マーヴ・ピアス、ラルフ・ピー・ウィー・ミドルブルックスの7人によって共同で作曲されました。収録曲は以下の通りです。

1. ファイアー - "Fire"
2. トゥゲザー - "Together"
3. ランニン・フロム・ザ・デヴィル - "Runnin' from the Devil"
4. 自由の魂 - "I Want to Be Free"
5. スモーク - "Smoke"
6. イッツ・オール・オーヴァー - "It's All Over"
7. ホワット・ザ・ヘル - "What the Hell"
8. トゥゲザー/フィーリングス - "Together/Feelings"

参加ミュージシャンも豪華で、各メンバーが複数の楽器を演奏し、ボーカルも担当しています。リロイ・シュガーフット・ボナーはボーカルとギターを担当、ビリー・ベックはボーカルの他にピアノ、エレクトリックピアノ、ハモンドオルガン、クラビネット、アープ・シンセサイザー、パーカッションを担当しました。マーシャル・ロック・ジョーンズはベース、ジェイムズ・ダイアモンド・ウィリアムズはボーカル、ドラムス、コンガ、ティンバレス、ゴング、パーカッション、フリューゲルホルンを担当しました。クラレンス・サッチ・サッチェルはボーカル、ソプラノ・サクソフォーン、テナー・サクソフォーン、バリトン・サクソフォーン、パーカッションを担当、マーヴィン・マーヴ・ピアスはトランペット、フリューゲルホルン、ヴァルヴ・トロンボーンを担当、ラルフ・ピー・ウィー・ミドルブルックスはトランペットを担当しました。

『ファイアー』は、オハイオ・プレイヤーズの音楽的な才能と創造性が最大限に発揮された作品であり、ファンクミュージックの歴史において重要なアルバムの一つとして、その地位を確立しています。リリースから数十年経った現在でも、そのグルーヴィーでパワフルなサウンドは、多くの音楽ファンを魅了し続けています。

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