ファストフードが世界を食いつくす

書籍『ファストフードが世界を食いつくす』の概要

エリック・シュローサーによる『ファストフードが世界を食いつくす』（原題：Fast Food Nation: The Dark Side of the All-American Meal）は、ファーストフード業界の実態とその影響に関する調査報道をまとめた作品です。この書籍は、雑誌「ローリング・ストーン」に掲載されたアーティクルを基に発展・深化させた内容を特徴としています。特に、アプトン・シンクレアの『ジャングル』と比較されることが多く、米国文化の象徴としてのファーストフードの役割にスポットを当てています。

内容の概要

この本は、アメリカのシャイアン・マウンテン空軍基地にピザが届けられる場面から始まります。この描写を通じてシュローサーは、万が一未来の考古学者がアメリカの遺物を掘り起こす際に、兵器とともにファーストフードが文化的な遺産として注目されるだろうと考察します。

第1章と第2章では、ファーストフードの黎明期に登場した重要な人物たち、すなわちカール・カーチャーやマクドナルド兄弟、ハーランド・サンダースについて詳述されています。モータリゼーションの影響でドライブインが生まれ、作業の効率化が進んだこと、さらにはフランチャイズの展開がどのように行われたのかが語られます。その後、マーケティング戦略により消費者、特に子供たちに対してブランド意識がどのように形成されたのかも触れられています。

第3章と第4章では、ファーストフード業界における労働問題に焦点を当てています。低賃金や店舗間競争の影響で多くの労働者が困難な状況に置かれていることが描かれ、業界が政治に与える影響力についても言及されています。

さらに第5章と第6章では、冷凍技術の進化やアグリビジネスの寡占化、製品の均一化がもたらした影響に関する考察が行われています。これにより、消費者がつい手に取る商品が同じような特色を持つようになった過程を理解することができます。

第7章と第8章では、精肉業界の労働問題が具体的に描かれています。危険な労働環境で働く移民労働者たちの厳しい現実が紹介され、彼らが直面している低賃金の問題が強調されています。

第9章では、O157やBSEといった食の安全問題に関する調査結果が述べられ、消費者の健康に対する懸念が取り上げられます。最後の第10章では、ファーストフードのグローバル展開とそれに伴う「反マクドナルド運動」などの社会的反応について述べ、名誉毀損裁判の経過なども詳しく触れられています。

シュローサーは、本書を通じて消費者の行動次第で企業が変化することを訴え、私たちの選択が重要であることを強調しています。

児童版と批評

2006年には、シュローサーが子供向けに内容を再構築した『おいしいハンバーガーのこわい話』が出版され、イラストはチャールズ・ウィルソンが担当しました。また、経済学者のトーマス・ディロレンゾは、ファーストフードが健康に及ぼす影響は他の危険と比較して微小であり、業界が問題解決に向かっていることを無視していると批判しています。

映画化

本書は2006年にリチャード・リンクレイターにより映画化されました。この映画では、架空のファーストフードチェーンを舞台に、労働問題や食の安全性が描かれています。シュローサー自身が脚本を担当し、グレッグ・キニアやポール・ダノらが出演しましたが、興行成績は振るわなかったと言われています。

もう一度検索