シャイアン・マウンテン空軍基地とは？意味をやさしく解説

シャイアン・マウンテン空軍基地

シャイアン・マウンテン空軍基地は、アメリカ宇宙軍が管轄する基地の一つです。コロラド州エルパソ郡のシャイアン山中に位置し、冷戦時代には北アメリカ航空宇宙防衛司令部（NORAD）の地下司令部として、その名を知られていました。現在、基地は待機保管状態にありますが、その堅牢な構造は今なお注目されています。

建設の背景

冷戦の激化とともに、核戦争の脅威が増大する中、1957年のスプートニク・ショックは、大陸間弾道ミサイルによる攻撃の可能性を現実のものとしました。これを受け、1958年にNORADが設立されましたが、当初はエント空軍基地の地上施設に司令部が置かれていました。しかし、地上施設は核攻撃に対して脆弱であるため、より強固な地下施設に司令部を移転する必要性が認識されました。

そこで選ばれたのが、地震が少なく、他の軍事施設にも近いコロラド州エルパソ郡のシャイアン山でした。1961年から地下司令部の建設が開始され、その堅牢な構造が特徴です。

基地の運用

1964年に基地が完成し、1966年までにNORADの移転が完了しました。当初、NORADの主な任務はソ連の爆撃機に対する防空でしたが、弾道ミサイル技術の発展に伴い、弾道ミサイルの早期警戒も重要な任務となりました。1990年の湾岸戦争時には、DSP衛星によるスカッドミサイルの発射警戒もこの基地から行われました。また、NORAD以外にも、空軍宇宙軍団やアメリカ北方軍も司令部を置いていました。

現在の状況

2006年、シャイアン山の施設は、対テロ戦争の時代においては非効率と判断され、各部隊は近隣のピーターソン空軍基地の地上施設に移転しました。しかし、移転後も施設は空軍宇宙軍団の管理下に置かれ、要員の訓練や短時間での稼働復帰を可能にするための維持管理が行われています（モスボール状態）。

2015年には、アメリカ国防総省が7億ドルを投じて施設の改修を発表しました。この改修は、軍の精密通信機器を移転させることを目的としており、シャイアン山の施設が電磁パルス（EMP）攻撃に対して強固であるという点が、その理由の一つです。

この基地は、冷戦期の国防中枢として、映画などのフィクション作品にもしばしば登場します。特に、1983年の映画『ウォー・ゲーム』での描写は有名です。

施設の特徴

基地は花崗岩の山体中に建設されており、地上から約1.6kmのトンネルを抜けた場所に施設があります。2つの巨大な耐爆ドア（各25トン）によって守られており、内部の建物自体も、数メガトン級の核爆発が数キロ以内で発生しても耐えられる設計となっています。

主要な内部構造物は15個あり、そのうち12個は3階建て、残りの3つは平屋または2階建てです。これらの構造物は、岩壁に直接設置されているわけではなく、核攻撃による振動を軽減するために、制振材としてのバネの上に設置されています。

基地内は核シェルターとしての機能も備えており、食堂、医療施設、運動施設、売店など、生活に必要な施設が完備されています。また、非常用発電機や、化学兵器、生物兵器、放射能を除去する換気システムも備えられています。

シャイアン・マウンテン空軍基地