ファゼンダ

ファゼンダとは

ファゼンダ（ポルトガル語: Fazenda）とは、主にブラジルにおいて1840年から1896年の間に発展したコーヒー豆を生産する大規模な農園及びその周辺の私有土地のことを指します。この制度によってコーヒー豆の生産が盛んになり、それに伴い大地主のことを「ファゼンデイロ」と呼ぶようになりました。実際、ファゼンダはポルトガル語で「農場」を意味し、ブラジル経済の中心的な輸出商品であるコーヒーの生産に特化した形で存在しました。しかし、このシステムはブラジルにおける奴隷制を助長する一因ともなったのです。

ファゼンダでの農作物

植民地時代のブラジルでは、初めに染料を得るための「ブラジルボク」やサトウキビが栽培されていました。ところが、他国の競争に直面し、天然ゴムの生産へと移行することとなりました。しかし、19世紀の中頃、新たにエチオピアから持ち込まれたコーヒー豆が経済の変革をもたらしました。ファゼンダは、特に南部のリオ・デ・ジャネイロやサンパウロの周辺で、コーヒー豆の成熟した生産拠点となり、農業が行われる地域も拡大していきました。1840年代にはコーヒー豆の輸出量は40%以上を占め、1880年代にはそのシェアは60%に達しました。現在、ブラジルは世界一のコーヒー豆生産国として知られています。

ファゼンダの問題点

ファゼンダの拡大とともに、ブラジルにおける奴隷制度は強化されていきました。140万人以上のアフリカ人が奴隷貿易によってブラジルに連れてこられ、彼らは労働を強いられました。奴隷貿易自体は19世紀に終焉を迎えましたが、奴隷制度自体は1888年まで残りました。その後、ファゼンダはスペインやイタリアなどからの移民を「コロノ」と呼ばれる契約労働者として受け入れるようになり、日本を含むアジア各国からも移民が増加していきました。

ファゼンデイロはコロノに対して作物の植え付けから収穫までの労働を負わせ、歩合制で報酬を支払いました。このシステムでは、コロノは劣悪な労働環境で働かされ、彼らの労働条件は非常に厳しいものでした。また、大規模なファゼンダには私有地内に学校や病院、教会が併設されていることがありましたが、ファゼンデイロの権力は強大で、時には警察権や司法権をも有していたため、人権問題に繋がることも少なくありませんでした。

ファゼンダの正の側面

一方で、ファゼンダから得られたコーヒー豆の輸出が増加することで、ブラジルは1850年以降、重要な成長を遂げることができました。ブラジル皇帝ペドロ2世は、奴隷労働者によって成り立っている繁栄する経済を見て、奴隷制度廃止の必要性を訴えました。鉄道や蒸気船、電信などの新技術が導入される中で、ファゼンダのコーヒー豆による収入で都市が成長し、商人や法律家、また中産階級の人々が増える要因ともなりました。

さらに、コロノたちも産業化の過程で安価な労働力として工場での仕事を得ることができ、ブラジルの工業化に寄与していました。

結論

ファゼンダはブラジルの経済発展に大きな影響を与えた一方で、奴隷制や劣悪な労働環境など多くの社会問題も抱えていました。その歴史は現在のブラジル社会や経済にも深く根付いており、歴史を理解するうえで重要な要素といえるでしょう。

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