ファトフ軍

ファトフ軍（Jaish al-Fatah）について

ファトフ軍（アラビア語: جيش الفتح‎、英語: Army of Conquest、Jaish al-Fatah）は、シリア内戦における反体制派の連合体であり、2015年3月に結成されました。この組織は主にスンニ派イスラム主義者から成り、シリア北西部のイドリブ県を制圧することを目的としています。彼らはシリア政府のバッシャール・アル＝アサド政権やISIL（イスラム国）などに対抗するために、様々なイスラム主義組織と協力しています。

結成の経緯

アラブの春は2011年以降、シリアにも影響を及ぼし、デモが鎮圧される中で反体制運動が高まりました。2011年10月には、シリア政府軍から離脱した軍人たちによって「自由シリア軍」が結成されましたが、統制が取れず、多くの派閥に分かれていきました。その結果、士気の高いイスラム過激派が台頭し、反体制派の主導権を握っていきました。

ファトフ軍は、複数のイスラム過激派組織が連携して成立しました。その中で、アル＝ヌスラ戦線やシャーム自由人イスラム運動が重要な役割を担い、重武装かつ組織化された軍団として、イドリブへの攻撃を開始しました。2015年5月には組織の再編も行われ、さらなる影響力を持つようになりました。

イドリブの制圧

ファトフ軍は2015年の春に攻撃を開始し、数千人の戦闘員が動員されます。約4日間にわたる激しい戦闘を経て、30日にはイドリブ市を制圧しました。この時、反体制派は市民からの歓迎を受け、政府に対する強い抵抗を示しました。イドリブの制圧により、彼らは政府の拠点ラタキアへの近接を図ることが可能となりました。

軍事的および政治的影響

ファトフ軍の台頭は、シリア内戦の力学に大きな影響を与えました。彼らはイドリブ県内で政府軍と親政権勢力を打ち破り、反体制勢力間の協力を強化しました。しかし、その後のロシア軍の空爆により、ファトフ軍は一時中立に追い込まれることになります。これに伴い、彼らの支配地域での統治が試練を迎えることとなりました。

組織の再編と分裂

2016年には、シャーム自由人イスラム運動により、ファトフ軍が再編され、アルカイダ系の様々な勢力が集結しましたが、一方で内部の対立も深まりました。特にシリア征服戦線との軋轢が生じ、最終的にはファトフ軍が完全に分裂してしまいます。この分裂によって、反体制派の弱体化が進み、ファトフ軍内部でも意見の対立が常に存在していました。

統治機構と生活環境

アブドッラー・ムハイシニーはファトフ軍の指導的存在であり、彼はイドリブで「首長国」を樹立しました。ムハイシニーの統治 bajo シャリーアに従った制度は、住民に対する抑圧的なものであり、物理的および心理的な圧力を加えています。彼のもとで、イドリブには数つの刑務所が設置され、悪条件の下で住民が拘束され、処罰を受けているという報告もあります。また、刑務所の環境は劣悪で、アサド政権と比べても状況が悪化しているとされます。

結論

ファトフ軍はシリアの内戦における重要なプレーヤーであり、多くの変遷を経て現在もその活動を続けています。彼らの組織としての特徴、内部の意見対立、統治の実態について知ることは、シリア情勢の理解に欠かせない要素となります。

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